早くも広がるテナント獲得競争

 日本生命は皇居近くにある22階建ての丸の内ガーデンタワーを保有する。だが、このビルのテナントである三井物産は20年に竣工する自社ビルに移る予定で、ガーデンタワーには入居企業がいなくなる。日本生命は浜松町にも18年竣工予定の29階建てのビルも開発しており、そこのテナントも誘致している。

 築年数の浅い都心の高級オフィスビルでは、すでに空きオフィスが増え始めている。例えば、三井不動産が開発し、07年に開業した六本木のミッドタウン。昨年、約5500人の社員を抱えるヤフーは西武ホールディングスが新築した紀尾井町の東京ガーデンテラスに移転した。さらにファーストリテイリングもユニクロの社員約1000名を今年2月、新設の有明の物流センターに移す。

 この2社の移転でミッドタウンには最大で約3割の空室率が生じるとの予想もある。三井不動産は18年以降、日比谷、日本橋、田町などに高層ビルを次々に開業する予定で、これらのビルの入居企業探しも課題だ。

 20年の東京オリンピック開催を控え、建築費や人件費は上昇を続けており、今後稼働するオフィスビルは高いコスト負担に見合う賃料が必要。しかし、不動産調査会社のCBREの予想によると、17年から18年にかけ、東京の最上級高層ビルの賃料は1%下落する見通しで、18年に竣工するビルの中には入居企業が不足したままオープンせざるを得ないところもありそうだという。

オフィスビル売買も縮小の心配

 三鬼商事によると、都心オフィスの月間賃料は13年12月にリーマンショック後最低の一坪当たり16,207円まで低下した。昨年12月時点で18,476円まで回復したが、入居状況が改善している割には賃料上昇の勢いは弱い。それを反映して不動産会社の株価もさえず、TOPIXの不動産セクターは昨年7.7%下落、年間ワースト8位のパフォーマンスだった。

 賃料の伸び悩みで、ビルの不動産取引も縮小している。みずほ信託銀行系シンクタンクの都市未来総合研究所によれば、オフィスビルの取引額は15年の1兆7880億円から16年には1兆2870億円と28%の減少、全体の取引額も4兆3350億円から4兆円に減った。

 市場の期待はヤフーなど成長企業からの需要拡大だが、同社のヤフーのコーポレート統括本部の工藤真一オフィス最適化推進部長は「ワークライフバランスを考える中、サテライトオフィスなど会社の外でも仕事ができるような環境を作ることも考えている」と語る。

 同氏は「社員が増えたからといって本社の拡張には限界があると思う」と指摘、積極的に増床のための移転を繰り返すのは難しいとの見方を示している。

(藤田淳子 編集:北松克朗)