ティラーソン発言は政府が長年コミットしてきた「航行の自由」に矛盾するとみられ、国防長官に就任する予定のマティス元中央軍司令官は賛同していない。

 マティス氏は、中国の南シナ海における活動は世界の秩序に対する攻撃につながると述べた。ただ、米国と国防省は「不完全もしくは一貫しない戦略に対応する必要が生じないよう」、調和のとれた政策をまとめ上げる必要があるとも話した。

 トランプ氏は選挙戦中に再三、中国は貿易面で米国に「性的暴行」を加えていると激しく非難してきた。同氏が直面する最大の外交的問題へ新政権はどうアプローチするのか。相反するメッセージは、そこに困難があることを浮き彫りにしている。

リスクと報復

 移行チームに非公式に助言をしている政府元高官は、米国が軍事や貿易で中国に圧力をかけた場合のリスクをチームは十分考慮していないと指摘。ロイターに対し「中国からの報復などを過小評価すべきではない」とくぎを刺した。

 トランプ氏は中国製品への報復関税も示唆しており、両国だけでなく世界経済にも悪影響を及ぼすリスクが出ている。

 トランプ氏は国家安全保障に関連して、アジア地域に関する経験を豊富に有する高官をまだ指名していない。より安定したアジア政策を策定するためにレトリックを行動に変換する専門知識が、新政権には不足するのではないか――アナリストにはそう考える向きもある。

 だがトランプ氏は、中国に対し批判的な考えを持つロバート・ライトハイザー氏を米通商代表部(USTR)代表に指名。新設する「国家通商会議」には、著作「Death by China」(中国が破滅をもたらす)で知られる対中強硬派エコノミストのピーター・ナバロ氏をトップに据えることを決めた。

 トランプ氏の顧問らは、「力による平和」を追求する姿勢は米国のアジア政策を強化すると主張。こういったアプローチが危険であり逆効果を生むとの懸念を一蹴してみせる。

 トランプ氏と閣僚候補者らは、北朝鮮の核やミサイル問題に関しても、解決に向けて中国に圧力を強めていく考えだ。だがアナリストらによれば、米国がサイバー攻撃などの問題に関し中国への圧力を増すのであれば、中国側は協力する気はないという。

 今年は5年に1度の中国共産党全国代表大会を控えており、権力基盤の強化を狙う習近平国家主席の下、台湾や南シナ海といった重大な国家主権の問題は強い反応を引き起こすとの見方は多い。

 北京大学のZha Daojiong教授は、文明間の衝突というテーマは中国社会で一段と取り沙汰されるようになっており、悪い前兆だと指摘。「南シナ海を巡って、米国で士気を鼓舞する太鼓が鳴り続けても、問題解決にはまったくつながらない」と語った。

(Michael Martina記者、Christian Shepherd記者 翻訳:田頭淳子 編集:高木匠)