失言でやすいミニ集会

 前原誠司氏が外務大臣を辞任し波紋を広げている。いろいろ議論はあるが、政治家としての危機管理能力が問われている。日本政治の問題は、政治家の危機管理能力を養成する機関がないことだ。

 ここアメリカでは科学的に政治家およびそのスタッフの危機管理能力養成を行っている。その一つの事例を紹介しよう。

 ここはハーバード大学ケネディスクール。私は政治家時代、休暇を活用してこの学校の特別プログラムで学んだ。久しぶりに顔を出してみると、改めてそのユニークな講義内容に刺激を受けた。

 今回は文字通り、政治家養成講座、“The Making of a Politician”、を紹介する。

「最悪の集会だ。こんなことしてたら絶対に大統領候補になれない!」

 スティーブン・ジャーディング教授が大声を張り上げる。

 ジャーディング教授はキャンペーンマネジメントのプロ。彼自身、ジョン・エドワーズ、ボブ・ケリーら高名な米上院議員の選挙対策を取り仕切った経験を持つ。2001年にはニューヨーク・タイムズ紙に“もっとも有能な選挙参謀の一人”と格付けされた人物である。

 最悪の集会とされたのは、08年の大統領選出馬を目指していたニュート・ギングリッジ議員のミニ集会。ここでの質疑応答の様子がビデオで流れる。

 質問の主は若い女性。「私たちは政治家に一般人以上の高潔さを求める。その点、あなたは2回離婚して、3回結婚している。それをどう説明するのですか?」

 ギングリッジ議員の答えは「まあ、2度の離婚も3回目の結婚もいいことだと思ってくれりゃいいじゃないか」。聴衆をなめている。ミニ集会だから気が緩んだのだろう。そういえば、米国務省のケビン・メア日本部長の沖縄に対する発言も大学生との対話集会でのことだった。日本の政治家の失言も地元でのミニ集会で起こることが多い。

 知った顔も多く、メディアの取材もない場合が多い。ジャーディング教授は「そこが一番の落とし穴だ!」と叫ぶ。「いいか!ギングリッジの失敗は小集会だと思って緩んだ対応をしたことだ。この映像は携帯で撮影されユーチューブにアップされ何百万人もが見た。政治家なら、いつどこでもマイクがついていて、撮影されていると思わないとダメだ」と続ける。