二つ目の理由は、狭隘なナショナリズムの抑制の必要性からである。

 反日デモなどが起きたとき、「あんなことをしたのは現体制に不満を持っている貧乏人だ」とよく言われる。不平等の拡大は、改革の恩恵を受けることができなかった人々の不満を増大させる。それが外に向かい、狭隘なナショナリズムを生み出す温床にもなりうる。これまでは貧しい人々の不満を「愛国」の名の下に外へ向けさせる傾向があったが、世界の政治・経済の舞台で中国の存在が無視できなくなっている現在、そのようなやり方は国家イメージを損なうため、賢明な策とはいえない。

 三つ目の理由は、「二つの100周年」のうちの「一つ目の100周年」の達成が困難になったら、中国共産党の求心力にも影響を及ぼすためである。

 中国共産党は、同党成立100周年までに、衣食住に困らず経済的に比較的満たされた“小康社会”を築き上げ、さらに中華人民共和国成立100周年までに富強・民主・文明・調和の社会主義現代化国家を築くという目標を立てているが、一つ目の100周年である2020年まであとわずかしか残されておらず、貧困を撲滅できなければ、その目標の達成は困難であり、中国共産党は人々の支持を得られなくなる。

 貧困対策のほかには、国民の直接的利益にかかわる課題にも取り組むことも重要である。なぜなら、現在は以前と比べて国民の教育レベルも高くなり、また情報量も多くなっているため、中国共産党は世論を無視できなくなってるからだ。例えば、最近、中国、とくに北京とその周辺地域の大気汚染が深刻だが、「汚染がここまでひどくなったのは、共産党政権が無策だからだ」と考える中国人は少なくない。大気汚染は人々の健康にかかわる問題であり、これを解決しなければ習政権は国民の支持を失ってしまう恐れがある。

「自己犠牲」の党員像を示し
党自体の改革を本格化

 習総書記の新年メッセージは反腐敗運動をさらに続けていくことも示唆している。

 中国は、国会に相当する人民代表大会よりも政権党である共産党のほうが権限が強く、政策決定にあたっては党の路線が反映される。習政権になってからは、経済分野でも党の発言力が増してきており、党の役割をより発揮させようという方向にあり、「特権階級化」した党の体質では政策立案だけでなく、その実行にも影響する。

 胡錦濤時代は「和諧社会(調和のとれた社会)」の理念を打ち出したが、党を根本から改革することができず、自ら提起した改革が大きな成果を残せなかったため、「不作為の10年」といわれた。そのため、「共産党は口ではいいことをいうが、何もできない」という人が出てくる。江沢民時代も胡錦濤時代も反腐敗についての言及があるが、結局のところ「一過性のキャンペーン」に終わってしまい、党の体質改善には至らなかった。だが、習政権は「反腐敗には終わりがない」と一貫して厳しい姿勢を崩しておらず、党の体質改善に対する本気度は高いといえる。