日本の大半の主要企業は「終身雇用制度」を継続している。したがって、この制度を前提に、企業組織を強くしていくかないといけない。そこで、私の執筆の第2回目では、リーダーシップと終身雇用の関係を考えてみたい。

 ここでリーダーシップの定義については、深くは立ち入らないが、狙っている将来のある状況に向けて、協力する人々の動機付けを高め目的意識をそろえるための作業、想定外の事態が起こったときにそれを乗り越えるための作業と、捉えておく。

終身雇用制度のない企業は
フォーマルな組織を使う度合いが高い

 終身雇用制度がある場合とない場合では、リーダーと働く人との関係は、「種」を異にするくらい違っている。つまり、組織内のネットワークの状態=「人脈」が大きく異なっているのである。

 最初に、終身雇用がない場合、組織の中がどうなっているかをみてみよう。まず採用に当たっては、どういう仕事か、その仕事に必要なスキル、会社の期待度が明示されて、働く人と会社が労働契約を結ぶ。したがって、働く人は、入社前の時点で、何をしたらよいのか、会社の期待とそれに対する報酬もわかっている。

 リーダーのほうも同じ状況なので、そのことがわかっており、わかっている人同士が、上司と部下としてチームを組む。つまり何をやればよいかがわかっており、互いに職務記述に沿って仕事の目的を達成しようとする。

 一方、たくさんの人がいる組織では、終身雇用の有無にかかわらず、必ず人脈が発生する。情報、貸し借り、時にはメンターの関係など、ソーシャル・キャピタル(社会的な財)が流れるのが人脈である。

 終身雇用がない場合は、自分から発生している人脈がカバーしている範囲が狭く、会社全体をカバーしているケースは少ない。それはどうしてかというと、採用されるときに仕事が規定されていて、社内で仕事上の接点を持つ人が限られているからだ。