12月の「記念日」に向けて
情報戦は活発になる

 アパが謝罪をしなくても業績に与えるダメージは限定的だろう。一方、先ほど触れたように、ここで頭を下げれば大きなデメリットがある。これを天秤にかければ、どちらが合理的な判断かは言うまでもないだろう。

 ただ、リスクコミュニケーションというものは、どこにゴールを設定するかで大きく変わる。今回は、あくまでアパグループという企業視点での対応を考えたが、「日本」の国際広報をゴールにすると、また違った対応となる。

 斜に構えた見方をすれば、このように頭を下げるメリットがないアパを意図的に狙って、攻撃をしているということも考えられるからだ。

 安倍首相に近しい経済人が南京事件は捏造だという本を書き、歴史を修正しようとしているというメッセージは、「欧米人の証言」戦略と相性がいい。国際広報的には、アパ側が頑なな姿勢をとればとるほど、「日本人は国際社会の声に耳を貸さず、必死に歴史を修正しようとしている」というイメージを広める格好の材料になる。

 いずれにせよ、今年12月13日の「南京大虐殺80周年」に向けて、今回のようなさまざまな情報戦が仕掛けられていくのは間違いない。アパのような覚悟がない企業は、足元をすくわれないような用心をしていただきたい。