ようやく訪れた政権交代は、50年以上に及ぶ自民党政権が残した“負”の遺産を処理する絶好の機会である。だが、その負の遺産は、途方もなく大きい。その解決は長い時間と国民的なコンセンサスが必要になる。

 青臭いと言われようが、ここは拙速を避けて、基本的な理念や基準を確立すべきだ。それが長期にわたって、国民の支持を得るためのカギを握っている。ここでは、最大の課題の一つである財政再建をテーマに、そのことを考えてみたい。

借金は“未体験ゾーン“に突入

 まず、現在の日本政府の財政状況を見てみよう。ご承知のように、今の財政は、支出(歳出)が収入(歳入)を大きく上回っていて、大赤字の状態が続いている。その赤字を国債という名の借用証書を発行して、穴埋めしている。
 
 この5年間の国債の発行額は、2004年度35兆円、2005年度31兆円、2006年度27兆円、2007年度25兆円、2008年度が33兆円だ。今2009年度は、本予算が成立した直後に補正予算が組まれたため、合計で44兆円もの発行が予定されている。

 歳入をどれくらい国債に頼っているかを測る指標が、国債(公債)依存度。これは順に、42%、37%、34%、31%、37%となり、2009年度は再び40%以上にまで高まる見通しだ。支出のほぼ半分を借金で賄うという異常な事態である。赤字に次ぐ赤字で、積もりにつもった国債の残高は、2008年度末で546兆円に達している。これはGDP(国内総生産)の110%に達する金額だ。日本が、1年間に生み出す付加価値をも上回っている。
 
 中央政府、地方政府、年金など社会保障基金も加えた借金の額と、GDPを比較したOECDの統計によれば、2008年で、日本は171%、これに対してアメリカ66%、ドイツ64%、フランス71%、EUで最悪の財政状況といわれるイタリアでも117%だから、日本の借金比率は、群を抜いて高い。

 富田俊基氏の著書『国債の歴史』によれば、戦争の費用を賄うために、国債を大量発行した第2次世界大戦中の1943年度で、国の借金の残高はGDP比の133%だったから、現在の日本政府の借金が、いかにすさまじいレベルに達しているかが分かる。