かつ、レーガン政権は、日本に自動車の輸出自主規制を強いるなど、かなり強硬な保護貿易政策を行ったにもかかわらず、米国の製造業の弱体化が進んだのです。だからこそ、トランプが大統領選で連呼した「Rust Belt」(オハイオ州など製造業が集中し衰退した米国中西部の地帯)という言葉、さらには「deindustrialization」(脱工業化)といった言葉は、このレーガン政権の頃から広く知られ、そして使われるようになったのです。
長期的に雇用を維持できない
ビジネス面の理由
もう1つのアプローチは、ビジネスの視点からのものです。企業の経営者の立場に立って考えると、それはトランプに恫喝されたら工場の海外移転を思いとどまるだろうけれども、それは海外移転を完全に止めるのではなく、単に移転のスケジュールを延期するだけのはずです。
企業の意思決定は、大統領の言動に多少は振り回されるにしても、基本的にはコストとベネフィットに基づいて決定されることを考えると、ある意味でこれは当然です。
したがって、現実的な企業の行動から想定されるのは、トランプが大統領でいる間は、企業は工場移転や雇用の大幅削減など目立つことはせず、ロボットやAIの導入により静かに自動化(=雇用の機械への置き換え)を進める一方で、4年後にトランプが大統領でなくなったら、延期していた海外移転や自動化の動きを一気に進めるだろう、と予想されます。
ついでに言えば、企業経営の観点からすれば、トランプが大統領でいる間は、外国企業はもちろん、米国企業も新しい工場を米国内に積極的につくろうと思わないだろうと考えられています。トランプが大統領でいること自体が、経営のリスクとなりかねないからです。
したがって、短期的には恫喝で雇用維持は実現できるかもしれないけれど、トランプが大統領を辞めた瞬間に工場の海外移転などが一気に進む可能性が高いので、製造業の雇用が長期的にも維持されるとは考え難いです。