「第二の東芝」を生みかねない日本企業の危うい経営眼東芝が解体消滅の危機にある。その原因として、運が悪かったのではなく、ある種の「経営力」が不足していたことが考えられる。多くの日本企業にとって、これは他人事ではないPhoto by Takahisa Suzuki

東芝、解体消滅の危機
なぜここまでジリ貧に?

 東芝が解体消滅の危機にある。2015年度に発覚した不正会計問題の際には、医療機器子会社と白物家電子会社を売却し、不振のパソコン子会社は事業を縮小。東芝の2016年3月期は、この医療機器子会社をキヤノンに6655億円で売却したことで、東芝は債務超過を免れた。売却益のお蔭で、株主資本が3289億円とプラス水準で踏みとどまることができたのだ。

 ところが2016年12月、原子力事業において新たに巨額の減損が発生することが発覚し、今年に入ってその減損規模が最大で7000億円に達することが判明した。このことで、東芝は再び債務超過の危機に陥ったことになる。

 しかも、不正会計の問題から続けて、これで3期連続の最終赤字決算になることも確定的になった。東芝は東京証券取引所の特設注意市場銘柄に指定されていたのだが、このままでいくと東証は、同社を上場廃止にするかどうかの判断を迫られることになる。

 上場廃止ならば資金調達が困難になり、企業継続ができなくなる。それを支援するための銀行の支援スキームも足並みがそろわず、そもそも経営が苦しい地方銀行を中心に支援拒否の動きも出ている。

 このような環境下で、2月27日に開催された東芝の取締役会が決めたのは、原子力と並ぶもう1つの柱である半導体部門のメモリ事業を分社化して、その株式を売却することだった。債務超過を回避するためには、主力中の主力事業でも売却しなければどうしようもないという経営判断だ。

 この判断で、かろうじて東芝は企業としては存続できる可能性が出てきたわけだが、不正会計事件以来、売れる事業は次々と売却し、今回主力の半導体事業の中では唯一の成長事業であるメモリ事業まで売却することで、「巨大企業東芝」は完全に解体されてしまうことになる。

 かつて重電業界の雄として、幅広い電機分野にビジネスを広げてきた東芝は、これからは収益力としてはほぼ原子力1本に依存した実質単一事業体に縮小される。そして、原子力事業が福島ショック以降、世界的に逆風に見舞われているのは周知の通りだ。東芝を待つのはジリ貧の未来しかない。