驚きの日本経団連会長発言

 東日本大震災の復興財源はどうしたらいいのか。現在、議論が錯綜している。

 驚いたのは、米倉日本経団連会長が、3月28日の記者会見で個人的な意見と断った上ではあるが、法人税引き下げを当面撤回して、復興の財源にまわしていいと述べたことだ。

 財界は、法人税率の引き下げについて、日本の法人税の実効税率が高いことが、日本におけるビジネス立地を不利にしており、日本にある企業の国際競争力を損なっていることを理由に主張していたのではなかったか。日本経済の振興のためには、法人税率が低い方がいいというのが彼らの主張だったはずだ。まして、今回の震災でダメージを被った製造業の生産のなにがしかは、海外での製造に切り替わり、日本国内におけるビジネスと雇用の減少につながる公算が大きい。

 元々の論理に自信があるなら、米倉会長は、むしろ今こそ法人税率の一層の引き下げが望ましいと主張すべきだった。

 あるいは、復興を意識するなら、被災地の再建のための企業誘致にあたって、特定地域で、期限付きで法人税率を大幅に引き下げるべきだと主張しても良かったのではないか。

 また、企業からの被災地への寄付について、一定期間、利益における一定比率までの金額を所得控除する制度を設けることを提言しても良かった。

 米倉氏は、おそらく一個人としての人柄が大変「いい人」なのだろうが、法人税率引き下げの先送りを容認する今回の発言は財界のリーダーとして論理が貧しかった。

 しかし、米倉氏がここまで思い詰めたことの背景には、日本の財政赤字が危機的で、追加的な国債発行は致命的であるとの、主に財務省によるプロパガンダの影響がありそうだ。