「保護なめんな」は氷山の一角?
「またか」と悪評高い小田原市の実態

「生活保護なめんな」ジャンパーだけじゃない<br />小田原市の福祉不毛地帯ぶり小田原市の「保護なめんな」ジャンパー問題。生活保護だけではなく、同市の「福祉不毛地帯」ぶりは以前から問題視されていた。その実態とは?

 2017年1月17日に明らかになった、小田原市「保護なめんな」ジャンパー問題は、3週間が経過した現在も話題になり続けている。

 これは、神奈川県小田原市の生活保護担当職員が、ローマ字および英文で「保護なめんな」「我々は正義だ」「(不正受給しようとする人々に)あえて言おう。クズであると」などと書かれた揃いのジャンパーを着て、生活保護受給者の自宅への訪問を含む業務を行っていたというものだ(参照:現代ビジネス/大西連氏記事『「生活保護なめんな」ジャンパーが冒涜したもの』)。

 その後、「ジャンパーは2007年からつくられていた」「当初は福祉事務所内だけで着用するつもりだった」「夏向けにTシャツもあった」「携帯ストラップもマグカップも」といった事実も明らかにされている。

 翌1月18日、社会運動家の稲葉剛氏は、小田原市ホームページにあった生活保護制度の解説が誤っており、利用できない可能性ばかりが列挙されていて、違法性が高いことを自身のブログで指摘した。小田原市は、問題のあった記述を同日中に修正した。

「生活保護なめんな」ジャンパーだけじゃない<br />小田原市の福祉不毛地帯ぶり小田原市役所の「生活保護における不適切な行為についてのお詫び」のページ 拡大画像表示

 翌週の1月24日には、生活保護問題対策全国会議のメンバーら7名が小田原市役所を訪問し、事前に送付していた公開質問状に基づく申し入れと意見交換を行った(参照:ハフィントンポスト/雨宮処凛氏記事)。小田原市は、ホームページに「お詫び」を掲載した。また、1月24日の記者会見で、第三者も含めた検証・不足していたケースワーカーの増員を行う考えを明らかにした(参照:日経新聞記事)。

 検証委員会には、生活保護を必要とする人々の権利擁護に取り組んできた弁護士・森川清氏、および生活保護受給経験を持つ和久井みちる氏(参照記事)が参加する予定である(生活保護問題対策会議による)。当事者目線・当事者経験を持つ人々による生活保護制度運用の検証には、大いに期待できそうだ。

 それにしても、正直なところ「また?」という印象だった。小田原市に限らず全国で、生活保護の申請に行った人々や、生活保護を受給している人々から、「生活保護ケースワーカーや相談員に困らされ、泣かされ、屈辱を味わわされている」という話を、私はあまりにも度々耳にしているからだ。年に最低2回と定められている訪問調査のときに土足で上がりこまれたとか、ズカズカと屋内に入り込まれて冷蔵庫やタンスを勝手に開けられたとか、精神の不調を抱えている人が気絶するまで罵倒を続けたとか……。