福島第1原発事故に伴う風評被害は日本全体をも巻き込もうとしている。なぜ風評被害は広がっているのか、どうしたらそれを食い止めることができるのか。「社長!事件です」の筆者でリスク管理が専門の白井邦芳ACEコンサルティング エグゼクティブ・アドバイザーが、風評被害の抑止戦略を緊急提言する。

今も四重苦で苦しむ被災地
そして今や「原発風評」は日本の課題に!

 突然、東北地方を襲った「東北地方太平洋沖地震」は、その後の津波、原発事故に続き、風評で被災地を悩ませている。この風評は「原発風評」と呼ばれているものである。原発方面で生産された農産物、品物は一切購入しないという動きや、鮮魚の輸出中止、工業製品ですら放射線測定の結果が求められる状況となっている。

 さらに、原発からはるか離れた場所においても、関連するイベントが次々に中止となり露店も閉鎖、花見の名所や観光地にも来る客は少ない。物流業界では、「放射能漏れ」の風評で運転者が安定的に確保できず、物流が断絶するという事態も出現した。

「放射能漏れ」の風評は、遠い海外の取引先にも及び、関西で生産した農産物や震災前に加工された製品に対しても、取引の停止やキャンセルが相次ぐ。日本に対する観光ブームや日本食ブームは完全に落ち込み、原発の問題は単に近隣住民だけの問題ではなく、日本全体の問題となりつつある。

「風評」は不安・不審・恐怖・惑いの
状況下で流布しやすい

 緊急事態が長期化すればするほど、一般メディアはもちろん、2ちゃんねる、ツイッター、ブログなどの進化系ITメディアで、書き込みやつぶやきが連鎖し、「風評」と「事実」が混同されやすくなる。「風評」が「事実」とまことしやかに記載された場合に、そのまま公然の事実として取り扱われてしまう事態に陥ることもある。