業界全体で“共同責任”
国の財政負担を抑え込む

 概要を説明しよう。9電力が共同出資し、「原子力賠償補償機構(あるいは基金)」と呼ぶべき東電へ資金を供給する枠組みを創設する。9電力はすべて原発を保有しており、万が一の事故のための保険的機能とすることで、機構への出資の正当性を担保する。

 この機構が東電へ劣後(他の債権より支払い順位が劣る)ローンの供給、あるいは劣後債を購入することで広義の資本を増強し、多額の損失計上による債務超過を回避する。東電はおよそ10年をかけ分割返済する。機構の資金が不足した場合は金融機関から融資を受けるが、国が債務保証を付ける。機構の信用力を担保するために一部、国が出資することもありうる。

 この構想の下地は、銀行界の預金保険機構である。本来、金融機関の破綻処理機能が中心だったが、金融危機においては破綻予防的公的資金注入が行われた。りそな銀行のケースがそれで、今回もそれに近い。

 ただし、りそなは普通株購入による公的資金注入だったために、一時国有化の色合いが濃かった。一方、今回は劣後債など中間的な資金調達手段に限ることで、国の経営関与を限定したい意向だ。東電の経営責任を厳しく問うのは当然だが、民間企業として存続させ、最大限の賠償責任を負わせ続ける方針だ。

 政府内には、直接出資による一時国有化案や、水俣病の加害企業であるチッソのような新旧会社分離案などがあった。しかし、国の財政負担を最小限にとどめる一方で、東電の自己責任を極大化するための最適案は、この機構設立とされる。

 この機構構想を実現し、また、必要とされている現在1原発当たり1200億円と定められている原子力事業者の賠償措置額の引き上げのためには、政府は原子力損害賠償法などの改正を行わなければならない。第2次補正予算案は6月成立を見込んで策定されるが、関連法案として提出される可能性が高い。

 東電の株主責任の追及が必要だという指摘に対しては、「東電の株主は約100万人で、その多くが銀行預金と同様の安全運用先として東電株を保有していた個人株主であることを重視せざるをえない」(官邸幹部)という判断に、政府は傾いている。

 また、機構構想は業界の旧秩序維持という側面もあるため、送配電の分離など電力自由化政策を促進するには障害となるとの批判もあるだろう。

 現在、9電力は構想の趣旨を理解しつつも、東電救済色が前面に出ることについて、難色を示している。官邸は経産省と9電力の交渉の行方を注視している。

(「週刊ダイヤモンド」副編集長 遠藤典子)

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