手帳の「ほぼ日」とヨウカンの「とらや」に共通する企業価値「株式会社ほぼ日」上場に際して、「ほぼ日手帳」への事業依存度の高さが指摘されているが、それほど心配すべきことなのだろうか Photo by Toshiaki Usami

異色の上場企業「ほぼ日」が
株主から求められそうな課題

 3月16日、異色の上場企業が誕生する。会社名は「株式会社ほぼ日」。去年の11月までは「東京糸井重里事務所」と呼ばれていた会社である。1998年からウェブ上で「ほぼ日刊イトイ新聞」を発行している会社だというと、「ああ、読んだことある!」という読者も多いだろう。しかし、業種としてはメディア業ではない。

 というのは、「ほぼ日刊イトイ新聞」はべつに読者からお金をとっていないし、広告も出していないからだ。いや、私も気づかずに暇つぶしに読んでいたが、確かに広告が載っていない。お金を払って購読するようなテイストの記事でもない。メディアではお金を稼いでいる気配はないのだ。

 それでは何の会社かというと、小売業なのだ。売上の7割を占める主力商品が2001年に販売を開始した「ほぼ日手帳」である。大きさや内容が異なる4種類の商品があって、手帳本体の価格は2000円から4000円くらいの価格帯。それに別売りのカバーをつけて、自分らしい1年分の手帳が完成する。

 この手帳が売れている。スマホとグーグルカレンダー全盛のこの時代に、ほぼ日手帳はなんと61万部(2016年版)の売上を達成している。他にもアパレル商品やほっこりした食品などそれなりのヒット商品を生み出してはいるが、とにかく事業の収益の柱は手帳である。

 このヒット商品のお蔭で「ほぼ日」は売上高37億7000万円、営業利益5億円の高収益企業になっているのだ。

 さて、この「ほぼ日」が上場するときに、投資家はどういうつもりで投資をすればいいのだろうか。糸井重里氏が好きでほぼ日手帳を毎年使っている個人なら、「なんかこの会社いいと思っていたから将来性もありそうだね」と思って投資をしたいと思う人は少なくないだろう。

 まだこの原稿を書いている段階で株価がいくらになるかは決まっていないが(IPOの株価は3月上旬にブックビルディングで決まる)、発表されている想定価格が1株2300円なので、それから逆算すると会社の時価総額の目安は52億円ほど。ちょっと難しい指標だが、PER(株価収益率)という株価が純利益から見て何倍になっているかを示す指標が17倍になる。