胆石手術の事前準備で血液検査を受けたOさん、56歳。術前に別室に呼ばれ、主治医からHIV(ヒト免疫不全ウイルス)陽性を告げられた。息が詰まり頭の中が真っ白になった──。

 国内では毎年1500人前後の新たなHIV/AIDS(ヒト後天性免疫不全症候群)感染者が報告されている。日本国籍の男性が約9割を占めるほか、最近の傾向としてHIV感染者は同性間の性的接触によるものが多い一方、AIDS発症者では同性間、異性間の差がほとんどなくなっている。

 HIV/AIDSは性行動が活発な若年者の病気と思われがちだ。しかし実際は、あらゆる世代に満遍なく存在する。疾患啓発が行き届かなかった中高年層では、Oさんのように手術時の事前検査で判明するケースや、感染後10年以上を知らずに過ごし、ある日突然AIDSを発症して愕然とするケースが少なくない。

 したがって40代以上では感染予防もそうだが、まずはっきり白黒をつけることをお勧めしたい。若かりし頃、コンドームを装着せずに不特定多数と性行為を行っていた、海外赴任/渡航先で性的な接触を持った、などハイリスク行動の経験があればなおさらだ。感染していたとしても、複数の抗ウイルス薬による「多剤併用療法」で免疫能を改善・維持して発症を予防し、長寿を保つことも可能なのだから。