政府・東電の対応を全く評価しない国民と
諸外国との「リスクマネジメント」の差異

 福島第一原子力発電所の事故が起こって、間もなく1ヵ月半が経過する。事故はチェルノブイリ同様のレベル7と評価されている。そのチェルノブイリでさえ、事故発生から10日後には石棺の作成に着手していたのに対し、福島第一ではいまだに付け焼き刃の対応に追われ、示したはずの収束計画を実行できていない。

 今回の事故に対する政府と東京電力への評価は、厳しいものばかりだ。特に海外のメディアは、事故直後から警鐘を鳴らしていた。

 諸外国、特に自国でも原発を運転している国々は、事故後1日か2日で自国民に避難勧告を出した。「東京も安全ではない」という認識のもと、フランスは全ての在東京フランス人に帰国を勧告し、米国も原発から80キロ以内にいる米国人は全て避難させたうえで、東京在住の米国民にも避難推奨の通達を出した。

 ドイツ、ノルウェーなどは放射性物質の飛散状況シミュレーションをいち早く公開し、風向きによっては九州や沖縄まで被害が及ぶと警鐘を鳴らしていた。

 一方で、日本政府の情報開示およびリスクマネジメントは、これら外国の決定に比べて格段に遅く、また曖昧なものであった。この点については、筆者だけの印象ではなく、多くのメディアやネットでも指摘されていることである。

 今多くの国民は、政府の発表する情報に懐疑的であると思う。枝野官房長官が「ただちに健康被害はない程度の放射線」と会見したところで、国民は「本当か?『ただちに』とはどういう意味か?」という疑念を持ってしまう。

 もう少し言うと、政権の延命や自分たちの既得権益を守りたいあまりに、国民の安全をないがしろにしているのではないか、つまり「緊急時フリーライダー」なのではないかという疑念を今の政府は持たれている。

 政府のみならず、東京電力の対応や発表についても、国民は同様の感想を抱いているだろう。

 なぜ、このようなことになってしまったのだろうか。