近年の有名な粉飾決算事件で
実刑判決はあったか

〈(2)原判決も、「粉飾金額を確認して比較する限りは、本件の金額は少ないと言ってよかろう」(原判決48頁)と認めているところである。しかし、刑事事件として起訴された過去の粉飾決算事例は「(本件より)多少多い」などといったレベルではない。
たとえば

①山一證券事件は、平成7年~9年にわたり合計 約7428億円の粉飾決算事件であったが、東京高裁は、平成13年10月25日に元社長に対して、原審を破棄して懲役3年、執行猶予5年の判決を言い渡した。

②日本債券信用銀行事件は平成10年の約1592億円の粉飾決算事件であったが、東京地方裁判所は、平成16年5月28日に、元会長に、「懲役1年4月、執行猶予3年」の判決を言い渡し、東京高等裁判所は、平成19年3月14日にこの結論を維持する判決を下した。

③カネボウ事件は平成14年の粉飾決算事件であり、粉飾額は連結純利益で約58億円、連結純資産で約753億円に上ったが、東京地方裁判所は、平成18年3月27日に、元社長に対して、「懲役2年、執行猶予3年」の判決を言い渡した。

④フットワークエクスプレス事件は、証券取引法違反(虚偽の有価証券報告書の提出)に問われた事件であるが、その粉飾金額は、経常利益で274億円、当期未 処分利益で約1340億円にも上った。これについて、大阪地方裁判所は、平成14年10月8日に、元社長に対して、懲役2年、執行猶予3年の判決を言い渡 した。

⑤アイペック事件は、約80億円の粉飾決算事件であったが、東京高等裁判所は、平成15年11月18日に元社長に対して、懲役1年8月執行猶予4年の判決を言い渡した。

  仮に、本件が粉飾決算であったとしても、その総額は約53億円である。しかるに、7千数百億という、金額において、被告人の百数十倍に達する場合も含め て、すべて先例では執行猶予の判決が下されているのに、わずか53億円の、また1期限りの粉飾決算で、直ちに実刑に処するというのは、誰が見ても公平では ない。あまりにも、不公平であり、正義に反する、と言うべきである〉