橘玲の世界投資見聞録 2017年3月16日

新興国の雄・ブラジル、
銃とドラッグが蔓延する国の理想と現実
[橘玲の世界投資見聞録]

ブラジルの犯罪発生率は世界的に非常に高いというが、実態は?

 ブラジルはBRICSの一角として近年、目覚しい経済成長を遂げ、2014年のサッカーワールドカップや2016年のリオオリンピックを成功させた。だがその一方で、いまも国内に膨大な貧困層を抱え、治安についての評判は芳しいとはとてもいえない。

 外務省海外安全センターが海外の日本人向けに提供している「海外安全情報」では、「世界的に見てもブラジルの犯罪発生率は非常に高く、日本人の被害も多発しています。また、多くの犯罪には、拳銃等の銃器が使用されており、抵抗すれば銃器で危害を加えられるだけでなく、殺害される可能性も非常に高くなりますので、注意する必要があります」と書かれている。

 リオデジャネイロやサンパウロなど都市部については、「ファベーラ(スラム街)を活動拠点とする犯罪組織間の抗争事件又はこれら組織と治安当局との間の銃撃戦が後を絶たない状況です。ファベーラ周辺での流れ弾による被害も発生する等、一般市民の犠牲者も出ており、状況は深刻化しています」「誘拐事件に対しても警戒が必要です。特に、都市部では昼夜を問わず「短時間誘拐」(「電撃誘拐」とも言われ、金品や車両を強奪するために、拳銃等の銃器を使って脅迫し、一時的に拘束するもの。ATM等で現金を引き出させ、携帯電話や車両を奪った後に連絡手段のない市街から離れた場所で解放するのが一般的な犯行パターン。)が多発していることから、防犯対策に留意し、行動する時間帯や場所等に十分注意する必要があります」と警告されている。

 これを読めば、「怖そうだから近づかないようにしよう」と思うひとが大半なのではないだろうか。では、実際にブラジルの治安はどんな感じなのだろうか。

 リオデジャネイロは、グアナバラ湾に面したビジネス街のセントロと、コパカバーナやイパネマの海岸沿いに高級住宅地が連なる南部に大きく分かれる。内陸部の小高い丘にはファベーラと呼ばれる貧困地域が広がっている。

 旅行者の多くはセントロではなく、コパカバーナなど海岸沿いの高級ホテルに泊まるのだろうが、私が訪れたときはあいにくの雨模様で気温も低かったため、ビーチにはほとんど人影はなかった。夏は海水浴客のセクシーなビキニ姿で有名だが、冬でも天気がよければビーチバレーやビーチサッカーに興じるひとたちで賑わうという。

コパカバーナ海岸。あいにくの雨模様でビーチに人影はない     (Photo:©Alt Invest Com) 

 

 コパカバーナの海岸に沿って大通りが走り、海を一望できるホテルやコンドミニアムが並んでいる。

 メインストリートの裏手に商店や飲食店が集まっていて、日が落ちてからも人通りは多く、若い女性がスマートフォン片手に1人で歩いている。セキュリティの完備したコンドミニアムからいかにも富裕層といった男性がジョギング姿で現われたりもするが、どちらかというと、経済成長で勃興する(中の上の)中産階級の町という感じだ。

コパカバーナのメインストリート                   (Photo:©Alt Invest Com) 
夜のコパカバーナ。カップルが歩道のベンチで談笑している    (Photo:©Alt Invest Com) 
海岸から離れると庶民的な雰囲気になり、路上の物売りやホームレスの姿も目にする   (Photo:©Alt Invest Com) 


 南部の高級住宅地とセントロのビジネス街は地下鉄で結ばれている。コパカバーナの地下鉄駅は洞窟のような斬新なデザインで、列車も真新しい。地元のひとたちがごくふつうに使っているから、観光客が利用する主要路線なら安全面でも不安はない。

コパカバーナの地下鉄駅。洞窟のような斬新なデザイン        (Photo:©Alt Invest Com) 
真新しい地下鉄の列車。セントロまで3.8レアル(約130円)    (Photo:©Alt Invest Com) 

 

 リオデジャネイロのセントロは南米を代表するビジネス街ではあるものの、北京や上海のような近代的な都市をイメージすると拍子抜けするだろう。私が訪れたのは土曜日で、人通りがなく閑散としていたということもあるが、建物がどれも古いのだ。

 アジアの新興国の都市のように高層ビルが林立するわけではなく、かといってロンドンやパリのように石造りの重厚な建物が並んでいるわけでもなく、1960年代や70年代の街並みがそのまま残っているようで「なんかぱっとしない」というのが第一印象だ。

 グアナバラ湾に面した一角は最近再開発されたらしく、広い遊歩道は家族連れで賑わっていた。「休日のセントロは治安が悪い」といわれるが、港の近くにはカフェが集まる路地もあり、このあたりを歩くのならなんの問題もない。

リオのビジネス街セントロ。土曜日なので人通りは少ない       (Photo:©Alt Invest Com) 
海岸沿いにつくられた遊歩道。家族連れが散策している    (Photo:©Alt Invest Com) 
港に近い路地のカフェ               (Photo:©Alt Invest Com) 

 

 セントロの中心は地下鉄のカリオカ駅で、平日はビジネスパーソンや買い物客で賑わうのだろうが、土日はどの建物もシャッターを下ろしている。それでも地元のひとが歩いているから危険というわけではないが、人通りの少ないところはさすがにちょっと緊張する。

 セントロを代表する建物がピラミッドのようなカテドラル・メトロポリターナ(サン・セバスチャン大聖堂)。2万人を収容できる巨大な教会で、内部は床から天井まで60メートルもの巨大なステンドグラスが据えられている。その隣のキューブを積み重ねたような建物は、ブラジル最大の石油会社ペトロブラスだ。

 セントロのカリオカから歩いて5~6分の距離だが、このあたりまでくると人通りはほとんどなくなる。なんとなく不安になったので、ここから先は行かなかった。

収容人数2万人のカテドラル・メトロポリターナ            (Photo:©Alt Invest Com) 
ペトロブラス(ブラジル石油公社)の本社ビル。休日はほとんど人通りがない(Photo:©Alt Invest Com) 
 

 旅行者のブログでは休日のセントロを『北斗の拳』や『マッドマックス』の世界であるかのように描いているものもあるが、公園や広場など観光客の集まるところには日本式の交番が設置され、街中でもホームレスの家族に通りかかった女性が話しかけるなど、危険な感じはなかった。

 とはいえ、ほとんどの建物が閉まっているので見所があるわけでもなく、ここを訪れるなら平日の昼にした方がいいだろう。

公園の脇につくられた交番                       (Photo:©Alt Invest Com) 
ホームレスの家族に通りかかった女性が話しかけている      (Photo:©Alt Invest Com) 

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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