内部告発サイト「ウィキリークス」とともに、その主催者ジュリアン・アサンジの名は広く世界に知れ渡った。しかし、暴露本が世に溢れる今ですら、その素顔はヴェールに包まれ、正体は掴み難い。ウィキリークスと早くから協力関係を構築し、数々のスクープを世に送り出した英国の有力紙「ガーディアン」の特命取材チームメンバーが語る外交機密漏洩事件秘話の後編は、謎の人物ジュリアン・アサンジの正体に迫る。(聞き手/ジャーナリスト、大野和基)

――内部告発サイトはウィキリークスの専売特許であり、ジュリアン・アサンジの発明であるかのように世間では思われているが、実際はジョン・ヤングが主宰する「cryptome(クリプトーム)」が先駆けではないのか。

世界を揺るがした外交機密漏洩事件秘話(後編)<br />英ガーディアンの特命取材チームメンバーが激白!<br />「ウィキリークスのジュリアン・アサンジをスーパースターにしたことを今では悔いている」英「ガーディアン」紙のベテラン記者、デヴィッド・リー。ウィキリークスとの共同作業では中核的な役割を果たした。

 その通りだ。ジョン・ヤングの「cryptome」は、リーク情報を扱うサイトとして、ウィキリークス以前から存在していた。しかし、ジュリアンは偉大なショーマンだ。好き嫌いは別として、彼だからこそ、ウィキリークスという派手なブランドを作り上げ、しかもそれがユニークな発明であると世間の人びとを信じ込ませることができたのだと思う。

――アサンジとはかなりの時間を過ごしたのか。

 そうだ。

――アサンジという人物をどう評価しているか。ここ数年相次ぎ出版された暴露本を読んで感じた印象は、さながら人気をさらいたがるカルト教祖だ。

 実際に、そうだ。ジュリアンという人物は、カルトリーダーを想起させる。

 彼に会う人は、たいてい、二つの反応のいずれかを示す。そのパーソナルな行動にあきれ果てるという反応、あるいは心酔して弟子や侍者になってしまうという反応だ。

 ジュリアン自身、歯向かってくる人間や批判には我慢できない性格なので、弟子や侍者というかカルトメンバー的な人たちを周囲に集めてしまうところがある。ジュリアンは、自分を崇拝する人だけを好む。強烈なカリスマ性はあるが、考え方は常に極端だ。しかし、当初は非常に説得力があるように感じられてしまうのも事実だ。