東電の福島原発事故での賠償スキームが話題になっている。

 東電の賠償スキームそのものは単純だ。賠償は原子力損害賠償法に基づいて行われるが、これまで政府が明言しているように、同法3条但し書きによる免責が東電に適用されない。となると、東電が責任をもって行うこととなる。一方、東電の責任を超える部分は、被災者の泣き寝入りは容認することができないので、政府、つまり国民が負担することになるだろう。

東電は既に実質的に
債務超過状態にある

原発事故賠償金の国民負担を少なくし<br />電力料金引き下げも可能な処方箋を示そう

 ということは、「賠償額=東電負担分+国民負担分」という公式が成り立つ。ここで、東電負担分は、東電のステークホルダーである株主、債権者、経営者・従業員のいずれかが負担する。また、国民負担分は、税負担か電力料金値上げになる。

 さらに、負担関係をきっちり具体的に把握するには、東電のバランスシート(BS)を見なければいけない(図1)。資産は13.2兆円、負債のうち流動負債1.9兆円、固定負債8.8兆円(うち社債4.7兆円)、純資産2.5兆円(2010年3月末。連結ベース)。