「変われない」で失敗するケースは沢山あるが…

経営改革派のリーダーが失敗する理由小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 百貨店最大手、三越伊勢丹ホールディングス(HD)の大西洋社長が辞任を発表し、杉江俊彦取締役専務執行役員が4月1日付で社長に昇格する人事が発表されました。

 大西社長は、新宿伊勢丹の「メンズ館」の立ち上げを担った実績を持ち、従来型の百貨店経営に危機感を抱いて構造改革に乗り出し、婚礼や飲食店、旅行事業など、多角化路線を推進してきました。「ミスター百貨店」とも呼ばれ、売上低迷にあえぐ百貨店業界において改革派のリーダーとしてマスコミに取り上げられてきた人です。

 しかし、改革に邁進するあまり、矢継ぎ早に新規事業を立ち上げたことで現場が混乱したため、その責任を取る形で辞任したと伝えられています。

 後任の杉江次期社長は記者会見で「現場との対話、コミュニケーションが欠けていた」と問題点を指摘しています。

 一般論として、変化のスピードが速い今の時代、企業経営においては、いつまでも過去のやり方に固執したり、古い価値観を持ったまま時代の変化に対応せず、「変わることができずに失敗する」、というのはよく聞く話です。

 しかし、その一方で、スピード感を持って、時代の変化に対応し、改革を進めようとするリーダーが、改革を実行し切れずにうまくいかないというときには、どこに問題があるのでしょうか。