仕事中、千葉県の高層ビルで被災
経験したことのない揺れを体感

 Yさんは東日本大震災が発生した日、千葉県のある高層ビルで仕事をしていた。今までに経験したものとは違う揺れを感じたとき、恐怖のあまり声がでなかった。ただしクライアントにプレゼン中だったので、余りうろたえて見えてはいけないと冷静に行動するように心がけた。エレベータが止まってしまったため、非常階段でビルを下りているときに強い余震が襲ってきた。余りの怖さに足がすくんだ。ビルの鉄骨が軋んで悲鳴をあげるような揺れは今までの人生で経験がない。ビルから出ると街が泥で覆われていた。

「これが液状化なのか?」

 目の前の光景が信じられない。道路の至る所で地割れがしてそこから水が噴き出している。どこに足をついていいのかわからない。心もとない恐怖というのをはじめて味わった。

 この日は、交通機関が全て麻痺していた。部下と2人、東京を目指すもののなかなか辿り着かない。途中で1泊することにした、と会社に連絡した。しかし、その夜は一睡もできなかった。

翌月曜日から通常通り出勤
しかし、余震の恐怖から眠れない

 Yさんの会社は、サーバーの管理も行っている関係上、自家発電装置を持っていたうえ、オフィスが計画停電エリアにも入っていないために、地震発生の翌週の月曜日から通常通りに仕事が行われた。

 しかし、Yさんの心の中は落ちつかない状態が続いていた。余震の恐怖から逃れられないのだ。寝ていても眠りが浅いためにすぐ目覚めてしまう。携帯から緊急地震速報のアラームが鳴るたびに身をすくめてしまう。そんな日が続いて、不眠から体力が落ちていった。

 ある夜、都内も大きな余震に襲われた。その日以降、一人でいるのが怖くなってしまった。誰にも相談できずにいたYさんは、神経科の診察をうけることにした。

口数の少ない人も喋らずにいられない?
余震、原発事故で不安を訴える患者への処方箋

 杏林大学医学部精神神経科 古賀良彦教授によると、震災後、首都圏でも「寝られない」「高層ビルにいるのが怖い」と訴える方が少なくないという。普段口数の少ない人が自分のことを話しだしたり、やたらはしゃいだり、多弁になっているときは不安の現れである場合もある。こうした症状については、周囲の注意が必要だ。

 さらに古賀教授は、余震と原発事故によるストレスを次のように分析している。