アパレル創業者が前衛アートの若きパトロンを志した理由

『週刊ダイヤモンド』4月1日号の第一特集は「美術とおカネ アートの裏側全部見せます。」。およそ80ページにも及ぶ大特集では、お金の流れから作家の生活、歴史から鑑賞術まで全てを網羅した。ここでは、アートが好きな経営者や学者、画家や写真家など特集で取材した“美の達人”たちのインタビューをお届けしたい。今回は、人気のアパレルブランド「earth music&ecology」を手がけるストライプインターナショナル社長兼CEO、石川康晴氏。日本における若きアートのパトロンに名乗りを上げた、その真意を聞く。(『週刊ダイヤモンド』委嘱記者 野村聖子)

鑑賞者からコレクターへ
河原温氏の作品がきっかけ

──石川コレクションの軸は、コンセプチュアルアート(概念芸術)です。

 2013年ごろ、ある画廊から、コンセプチュアルアートの大家、河原温氏の「デイト・ペインティング」を国内のコレクターが手放す、という話が舞い込みました。これを今買わなければ、必ず海外に流出し、二度と日本には戻ってこない──。このとき、僕は“鑑賞者”から“コレクター”になったわけですが、この河原氏の作品を最初に買った以上、この文脈から外れない世界中の作品をコレクションしようと思ったのです。やはり、何事にもトーン&マナー(一貫性)が大切ですから。

──自分が好きな作品を、手当たり次第集めるわけではないのですか。

 僕の故郷である岡山には、日本を代表するアートの大パトロン、大原孫三郎氏、福武總一郎氏という、2人の先人がいますが、彼らが美術界で評価されているのは、大原氏なら西洋近代美術、福武氏なら現代美術という、コレクションのトーン&マナーがあるからです。そこで、僕は、彼らとは差別化した、何か尖ったコレクションをしたいと考えていたときに、河原氏の作品を最初に購入することになった。そこで、石川コレクションは、コンセプチュアルアート、しかも存命作家の作品で勝負することにしました。