多くの生産者は、流通・販売促進上の十分なノウハウを持ってはおらず、自らが生産した財の販売を卸や小売などの流通業者に委ねている。今回は、(生産者間のインタラクションを排除して)議論を単純化するために、十分に差別化された財を生産する企業、または独占的生産者を想定した上で、何人の流通業者に販売を委ねるかについて検討する。

 生産者と流通業者の間の取引では、生産者が出荷価格(=流通業者にとっての仕入れ価格)を提示し、それを受けて、流通業者が注文量を決めるというのが常態である。この状況で、自社製品を取り扱う流通業者の数が多くなれば、彼らの間の競争が激しくなり、流通マ-ジンが減るため、小売価格が下がる。

 このことによって総販売量が増えるから、出荷価格を一定とすれば、生産者の利潤も増える。それと同時に、小売価格が低くなっているため、消費者厚生も向上する。

 確かに、流通業者数が増えれば、彼ら1人あたりの販売量は減り、利潤も少なくなるが、(生産者と流通業者の利潤および消費者厚生の和である)経済厚生は増加する。すなわち、流通業者数が多くなれば「二重マージン問題」が軽減されるという意味で、競争的流通市場は効率的である。

フランチャイズ料の徴収

 次に、生産者が流通業者から(定額の)フランチャイズ料を徴収できるとしよう。生産者はフランチャイズ料の額を操作することによって、チャネルに生じた利益を再分配することができる。

 販売を委ねるために、流通業者に非負の利益を保証する必要はあるが(以下では単純化のために、流通業者に保証する利潤をゼロとする)、残りを自らの利潤にすることができる。この状況では、生産者は(分配される)チャネル全体の利潤を最大にするように行動することになる。

 ここで留意すべきことは、出荷価格=仕入れ価格の水準は、それが高くなり生産者の利益が増えれば、流通業者の利益が減るというように、チャネル全体の利益には影響を及ぼさないということである。