「大規模新築ビルへの移転」と
「西日本への本社機能分散」が始まった

 日本企業の“大移動”が始まった。東京の賃貸オフィス市場には震災の影響が如実に現れている。法人向けオフィスビル賃貸の大手仲介業者の経営幹部は「首都圏では大規模新築ビルへの移転が急増している」という。

「3月14日以降のほぼ1ヵ月間で、震災関連の依頼件数が302件にのぼりました。その内、直接的な被害を受けた東北(一部関東圏)エリアは126件。それ以外の、被害は受けていないものの今後のリスク回避を目的とするケースが186件。同業他社を含めると、リスク回避を目的とした依頼は500件を優に超えていると思います。新築大規模ビルの空室にはあっという間に商談が入り、借り手市場から一転、商談即決の事例が多くみられるようになりました」

 リーマンショック以後、首都圏では最大のコストであるオフィス賃料を抑制するために転居する企業が相次いでいたが、3.11の震災を境に、流れが逆転したという。耐震性能に優れた新築大型ビルの需要が急増しているのだ。

 大移動は新旧ビル間だけで起きているわけではない。「西日本への本社機能分散」も本格化しつつある。

「当社大阪支店への依頼75件のうち、62件は東京に本社を持つ企業からのものでした。震災直後のニュースでは計画性のない狼狽的な企業の西日本移転が話題になっていましたが、落ち着きを取り戻した3週間目以降、事業継続のための本社機能の一部移転の動きが活発になってきました。西日本といってもオフィスの場合は、圧倒的に大阪志向で、福岡や名古屋はきわめてまれです。また企業の傾向でいえば外資系企業は業種を問わず全般、日本企業においてはよりシステムの重要性が高い金融やIT系企業の反応が早かったように思います」(前出の不動産仲介業者幹部)