リーマンショックを契機とした世界的な不況によって、非正規社員に対する契約の打ち切り、あるいは中途解除が注目された。おそらく非正規社員の大部分は、雇用契約期間に定めのある有期雇用者であり、そのために非正規社員の雇用が不安定になっていると言われている。このような事態を受け、厚生労働省の審議会でも有期雇用のあり方について見直し作業が進んでいる。

 有期雇用者に対する雇用の安定性については、司法の場において確立されたルールによって、ある程度担保されている。しかし、後で説明するように、そのルールが必ずしも明確でないために、一部の弊害が出ていることも否定できない。

 以下では、有期雇用者に関する実態を紹介したうえで、有期雇用を活用するにあたり、現場マネージャーの役割を考えたい。ここで、現場のマネージャーに注目する理由は、非正規社員の採用や処遇の権限は、人事部ではなく現場のマネージャーに課されている半面、非正規社員の活用方法やリスクについて正確な知識を持ち合わせていないケースがみられるからだ。

 その意味で、有期雇用者の雇用の安定性を考える際に、現場のマネージャーの役割が非常に重要であることを主張したい。

働く側も雇う側も
実は長期雇用を希望している

 本論に入る前に、有期雇用者の雇用はどれだけ安定しているのか、また、有期雇用者自身が雇用の安定性についてどう考えているのか、データを確認しておきたい。