地元住民も悩む
ホームレスの扱い

 こう語る前出・地元飲食店主は、「そもそも西成は『ホームレスの街』ではない」とし、西成という街を次のように教えてくれた。

「昔の『赤線(1958年の売春防止法施行以前、全国の公認で売春が行われていた地域の俗称)』、今の飛田新地やけど、そういうのがあるところって“繁華街”やろ?だから呑み屋とか飲食店が賑わうわな。ただの繁華街なんやけど、そこに日雇い仕事にアブれた者がホームレスになったり、よそからホームレスが来るようになって、今みたいな『スラム街』になってもうたんよ。せやから西成は、それこそキタやミナミと一緒とまでは言わんけど、元々は“歓楽街”やと思うてくれたらええ」

 この歓楽街である西成の飲食店に、今、若い世代やサラリーマンが、「安価」という理由から大勢、やって来るようになったというわけだ。

「東京やったら、サラリーマンやOLのお姉さんが、地下鉄乗ってランチに出たりするんやろ?この西成も天王寺から駅ひとつ、2分の距離で来られるわな。そういうのがもうちょっと広がってくれると、うちら地元の飲食店経営者は助かるんや」

 このように前出・地元飲食店主は、行政による「ホームレス浄化」が進めば、近隣地域からの客の流入が見込めると話す。

 他方、近年、「観光地化」が著しい西成だが、そこに「ホームレスがいない」状況は、「鹿がいない奈良公園と同じだ」という声もある。別の地元飲食店主が語る。

幕の内弁当200円、カツカレー400円など、割安弁当を売る弁当屋も多い西成地区。安い弁当もホームレスたちに好まれる

「最近、若い人が西成にやって来るのは、『物見遊山』『怖いモノ見たさ』やろ?面白半分で来るな!――そんな声もあるけどや。でも、ホンマにホームレスの人がここからいなくなったら、きっと不動産価格も騰がるわな。そしたら今みたいな“西成価格”なんて吹っ飛ぶで!難波や天王寺と同じような値段でサービス提供するようなことになったら、もう誰も西成には来ないんとちゃうか?若い外人さんなんか日本に来られへんで!」

 なかにはこんな声もある。労働者の街である西成には「弁当屋」が数多く存在する。家庭的な弁当を提供する店が多く、全国チェーン店よりも割安、200円程度の価格帯で「幕の内弁当」を出している。400円で「カツカレー」を供する店もあるくらいだ。

「ホームレスの人を追い出したら、この商売している人らがいちばん割を食う筈や。あの人らにとっては、弁当屋が売る弁当は“ご馳走”やし、命を繋ぐもんやさかいな」