「メールでのやり取りが十分普及しているにもかかわらず、重要な報告は面と向かって上司にしなければいけないルールがあった。前日の夜に地方で行われたイベントも、その日のうちに会社に戻って上司に報告する。泊まることも、家に直帰することも許されなかった」(33歳男性/イベント)

 筆者の感覚では、10年前、残業代を当然のごとく出さない企業が非常に多かった気がする。自分がいた企業もそうだった。そしてそれをもはや不服に思わず、「まあ仕方ないだろう」と諦めていた。恐ろしい話である。何より、残業代が出ない企業こそ長時間労働が蔓延して、社員が疲弊しているものである。

過去の哲学をまだ振りかざす人もいる
今後10年で大切になることとは

 ここに並べたエピソードは、今の時代なら間違いなく世間から非難されたり、社員が到底受け入れられずに反対したりするものばかりだ。そう考えてみると、10年という横軸の中で、働き方の意識改革が進んできた証明とも言える。

 一方、ここに出たエピソードは「わずか10年前のもの」と見ることもできる。社会の風潮は変わってきたものの、10年前に働いていた人の多くは、もちろん今も働いている。上述のようなブラック労働の一因となった社員や、その空気を受け入れてしまった社員たちは、変わらず現場にいるのだ。

 ということは、10年前のような哲学をいまだに振りかざしている企業は多数あるだろうし、いつ昔のように逆戻りしてもおかしくない。20代の頃にブラックな現場で働いていた人が、結局30~40代になっても同じくブラックな環境を作り出してしまうかもしれない。

 長時間労働を是正しようという社会の機運が盛り上がってきたことは歓迎すべきだが、依然としてブラックな現場はたくさんある。そしてそこで悲鳴を上げている人がたくさんいる。今から10年後、2017年を振り返って「あの頃は本当にひどかったよね」と言えるようになるか。社会全体で一律に働き方を改善して、今後10年で大きく水準を上げなければならない。ビジネスパーソン全員が、強い意識で取り組む必要性があるはずだ。