4月の貿易収支は4637億円の赤字だったが、5月30日に公表された5月上旬の貿易赤字は、これより拡大して6464億円となった。日本の貿易構造が東日本大震災によって大きく変わったことを、これらの数字が示している。

 貿易収支の赤字は、今後どの程度の期間にわたって継続し、どの程度の規模になるのだろうか? これを考えるにあたって、貿易収支赤字化要因のうち、今後比較的早期に克服できるものと、かなりの長期にわたって継続するものを区別する必要がある。

サプライチェーンが復活しても電力制約があるので、
輸出の回復には限界がある

 2008年以降の輸出輸入の推移を示すと、【図表1】のとおりである(ここには、季節調整済みの値を示している)。

貿易赤字の定着という経済構造の大変化

 輸出は、リーマンショック後大きく落ち込んだが、09年2月を底として回復した。しかし、10年4月頃で頭打ちとなり、それ以降は10年10月頃まで下落気味であった。その後再び上昇しつつあったが、東日本大震災によって急激に減少した。

 下落の原因は、いうまでもなく、震災で生産設備が損壊し、またサプライチェーンが寸断されたためである。輸出の中身を見ると、自動車の落ち込みが顕著だ。

 輸出総額の対前年同月比は、3月がマイナス2.3%、4月がマイナス12.5%、5月上旬がマイナス13.6%であり、下落率は拡大しつつある。つまり、5月上旬までの数字には、輸出回復の兆しは見られない。

 しかし、輸出減少の原因が生産設備の損壊にあるため、設備の復旧が進むにつれて、輸出は回復するだろう。供給能力自体は、遅くとも今年一杯、早ければ秋頃には、震災前の水準まで回復するだろう。

 ただし、そうであっても、輸出額が震災直前の水準(11年2月頃の水準)に回復するのは難しいだろう。そう考えられる理由は2つある。