未訳の最新ビジネス洋書のエッセンスが詰まった書評レポートを、PDFファイルで閲覧・ダウンロード提供する本連載。今回取り上げるのは、『ギークを指導すること~テクノロジーをもたらす従業員を管理・指導する方法~』です。(書評レポート提供/エグゼクティブブックサマリー

卓越した知識・技術を持つ<br />米国版「オタリーマン」を企業で活かす<br />『ギークを指導すること~テクノロジーをもたらす従業員を管理・指導する方法~』

かつて「おたく」とも訳された「ギーク」
その性質を知り能力を活かすには?

「ギーク」とはどのような存在かということを知る人は、まだ多くはいないかもしれません。このギークとは、高度な技術や専門知識を持つ従業員のことを指します。そして一般的な企業においては各々の部署に存在するいわゆるできる人物、まさにこれがギークなのです。

 著者のポール・グレンによる議論によって、アメリヵ国内ではこの特別な従業員「ギーク」が注目されるようになりました。彼らは高度な知識を有するが故に、企業側からすると管理が難しいと思われがちです。しかし同時に企業成長にとっては欠かせない貴重な存在とも考えられるため、本書では、ギークに対する関わり方、接し方を理解し、チームや組織、ひいては企業活動全体に活かしていくことを提案しています。

 特にギークの主な特徴である性格面や考え方、行動パターンに至るまで具体的な説明がされており、企業において欠かせないイノベーションに寄与してもらうために、どのように彼らをマネジメントしていくべきか、多くのヒントを得る事が出来るでしょう。

 まず、彼らはクリエイティブであることに最も力を注ぐことを基本としています。よって、ギークを指導するということは、彼らの創造力を導くということなのです。その為、いかなる企業においても当たり前のように掲げている規則そのものが彼らの中では、あまり重要視されていないことが多いのです。

 つまり、時間的なルール、業務やシステム、職場環境の規則を彼ら特有の概念で捉えている為、これについて規則を管理する側は、彼らが有益なものを生み出す為に、必要とする曖昧さを理解し管理することが重要であると述べています。

 しかし、重要な点は、あくまでもギークを特別扱いするというというわけではありません。

 前述にあるように、ギークの特徴を知り彼らの創造力を誘引することこそ、企業の目的を達成し続けるということなのです。その為、性格や態度、価値観など極めて特異なギークを指導する上で、まず、彼らがどのような人間であるかを理解することから始めて下さい。その主な性質として以下の4種類があります。

1.論理性への情熱
2.問題解決の考え方
3.子どものような物の見方
4.好奇心旺盛でパズルが好き

 このような性質から特筆すべき点は、3.の子どものような物の見方を持つ点です。誰しも人には、チャームポイントとウイークポイントがありますが、ギークは、この部分がイノベーションの支柱となるチャームポイントと考えられ為、管理者はこの4つのサポートをくまなく提供すること、そしてそれらを外部へ適切に伝える代理人としての役割を果たすことが求められます。

 つまり、未発達な社会能力ともいえるこの部分を綿密に補うことが、ギークと円滑なコミュニケーションを図る、極めて重要なことであるといえるのです。なぜなら、多くのギークは、人が成長過程で経験する課題を乗り越える力を身につけることが少ない為、日常は比較的内気で静かな人間なのですが、その表面を剥がすと強い反抗的な性質が見えてくるからなのです。

 またギークを引き入れ1つのプロジェクトを完遂する為に、管理者は彼らのモチベーションを育てることが必要です。その際、十分に注意を払っていただきたいことがあります。それは、彼らが自らの才能を最も発揮できる環境を整えること、つまり管理者が適切な人材を適切なプロジェクトに振り分けることなのです。

 彼らは自分自身と他者からの評価にはとてもシビアです。ですので、仕事の意味や今後のキャリアとの関係性を常に伝え、サポートし、時にはゲーム性をうまく煽り競争心を促進することが重要です。ギークのモチベーションを育てることは、これからの企業経営にとって利益を生み出す最速の方法であり最重要事項であるといえます。

 専門家ならではの知識と無限のアイデアを実行する力を持つギークという存在を、組織の中で有効に機能させる為に、知識労働者を管理する経営幹部、マネージャー、人事担当者の方に、本書を強くお勧めします。

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