「政治家の資質」の問題は、日本の雇用慣行にも原因がある

「政治家の資質問題」は、日本政治にとって「古くて新しい問題」である。「政治とカネ」の問題や「暴言・失言」の類で様々な閣僚が辞任し、歴代政権の基盤が揺るがされてきた。また、いわゆる「チルドレン現象」で当選してきた1、2回生議員が不祥事を起こすことも少なくない。

 これらの問題は、政治家個人のモラルの低さや人間性の問題とされることが多い。そして、その政治家は世間から激しいバッシングを受けるが、その嵐が過ぎ去ると、まるでなにもなかったかの如く世間から忘れ去られる。しかし、別の政治家がまた同様の問題を起こし、世間のバッシングに晒される。その繰り返しなのである。

 本稿は、政界で嫌というほど繰り返されてきた「政治家の資質問題」を、政治家個人ではなく、日本社会の構造問題と捉える。そして、現在日本政治の重要課題の1つである「働き方改革」、特に「終身雇用」「年功序列」の「日本型雇用システム」との意外な関連性に焦点を当てたい。

政治家の資質問題と選挙制度

 従来、「政治家の資質問題」は政治制度、特に「選挙制度」と関連付けられることが多かった。日本の選挙では、候補者の政治家としての能力よりも「3バン(地盤、看板、カバン)」が重視されることが指摘されてきた。この場合、一族に政治家がいる者が有利であり、日本では「世襲議員」が多くなり、政界への新規参入を試みる若者には高い「障壁が」存在している(前連載2009.05.26付)。

 特に、1993年の「政治改革」による「小選挙区比例代表並立制」導入以前の「中選挙区制」では、1つの選挙区に自民党だけが複数の候補者を擁立したために、同一選挙区内で自民党公認候補同士の争いとなる選挙では、政策よりも地元への利益誘導が重視された。政治家は、地元対応のために多額の政治資金を確保するために散々苦労していた。その結果、様々な「政治とカネ」の問題が起こってきた(本連載2014.11.5付)。そして、地盤・看板・カバンを持たない新人が政界に参入するには高い障壁となってきた。

 また、中選挙区制下で自民党だけが複数候補者を擁立できたことで、自民党政権が長期化し、38年間(1955年~1993年)続いた。これは、自民党内に「当選回数至上主義」のキャリアシステムという、「年功序列」の制度化をもたらした。