生活保護パチンコ調査と調剤薬局制限に感じる厚労省の「忖度」

不安漂う生活保護の議論
予言以上の“忖度”とは?

 2018年に予定されている生活保護法再改正・生活保護基準見直しに向けた動きが、今年度に入る前後から加速し始めている。

 本年2017年3月、全国の福祉事務所に対し、「生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況の把握について」(以下「厚労省パチンコ調査」)という事務連絡が厚労省から送付された。質問項目からは、「ギャンブルは止めるように指導してるんでしょうね?」「賞金を不正受給している可能性は考えているんでしょうね?」という圧力が濃厚に匂い立つ。調査結果は、すでに都道府県を通じて厚労省に提出されていると見られる。

 4月は、現在開催中の通常国会において、本年8月に期限切れを迎える「ホームレス自立支援法」の延長に関する審議が期待されていた。しかし、加計学園グループと現政権の関係・共謀罪・精神保健福祉法などへの関心が先行し、重要な問題でありながら、ほとんど忘れられた格好となっていた。 

 今月5月に入ってからは、さらに慌ただしい動きが続いている。

・2017年5月6日

 厚労省は、生活保護で暮らす人々が利用できる調剤薬局を1ヵ所に限定する検討を開始した。6月からモデル試行が実施され、効果や問題点が検証される見通し。この「調剤薬局を1ヵ所に限定」は、大阪市西成区(2012年)などで検討されたが、同市では撤回されている。

・2017年5月11日

 厚労省は、社保審・生活困窮者自立支援及び生活保護部会を新設。常設の生活保護基準部会(個々人に対する生活保護費について検討・検証)とは別途、審議を開始している。同日、自民党・厚労部会は、前述の「ホームレス自立支援法」を10年間延長する案を了承した。今国会で成立の見通し。

 生活保護制度は、これからどのように変わっていくのだろうか。

 どこでどのような審議が行われるかはともかく、いつ、どのような結論が出される予定であるかは、政府文書にすでに掲載されている。“予言”の数々と実現のされ方は、ガルシア=マルケスの小説「予告された殺人の記録」や、コミック作品『20世紀少年』の「よげんの書」、同じく『DEATH NOTE』の「デスノート」を思わせる。そして現実は、予言以上の何かになりつつある。まるで厚労省が、その先にあるものを“忖度”しているかのようだ。