東日本大震災を機に、日本人の結婚願望が高まっていると言われている。連載7回9回目では、合コンシェルジュと離婚式プランナーという、それぞれ全く異なった専門家から「震災後はパートナー探しの機運が高まっている」という指摘があった。

 しかし、昨今の婚活ブームを考えてみれば、これまでもとりわけ日本人の結婚願望が低かったとは言えない。むしろ、「結婚したいのにできない人が増えている」というのが現状であることは、これまで論じてきた通りだ。当連載では、そんな社会で人々が右往左往している状態のことを「ロス婚」と呼んでいる。

 もちろん、いまだ原発事故や復興への道筋など、先が見えない不安に晒されている我々にとって、「未曾有の大災害」がもたらした心理的な影響は、計り知れないものがある。

 警察庁の発表によると、5月の自殺者(暫定値)は3329人に上り、昨年同月の2782人を大きく上回った。被災地の福島県だけではなく、東京都でも自殺者が増えている。震災が原因で増加したかどうかは、現在内閣府が調査中のため断定はできないが、間接的な要因も含めれば、少なからず影響があったことは間違いないだろう。
そんな現状を踏まえれば、人々の結婚観や恋愛観にも変化が生じていると考えて、不思議ではない。今回は、震災後に起きた結婚に対する心境の変化について考えてみたい。

「こんなときパートナーがいたら……」
有事に頼れる人がいない寂しさを噛み締める人々

「震災以降、1人でいることのリスクを強く感じるようになりました。震災直後は友人に頼るのも、自分のわがままを押し付けてしまうような気がして心苦しく、1人じっと我慢していました。そのとき思ったのは、『こんなときにパートナーがいてくれたら、どれだけ心強いだろう』ということです」

 そう話すのは、都内で1人暮らしをする20代の女性。さらにこう続ける。