前回までは、BCGDVの4つの大きな特徴(スケールの大きさ、バリアフリー体制、グローバル環境、挑戦者気質)についてお話ししました。今回からは、BCGDVが実際にデジタルビジネスのプロジェクトをどのように進めていくのか、またそのメソドロジーについて、少しずつお話ししていければと思います。デジタルの分野で新規事業を始めたいと考えている方などにとって、少しでも参考になれば幸いです。

新規事業領域を4つに分類して考える

 一言でデジタル分野の新規事業といっても、その目的や内容によって、ビジネスモデルは千差万別であり、当然アプローチも変わってきます。そこでBCGDVでは、新規事業の領域を特定するのに下図(図1)を使います。

デジタルビジネスの新規事業をどう進めていくか

 社内では、この図の上2つの①と②をvertical growth、下2つの③と④をhorizontal growth、と呼んでいます。

 縦軸の上は、ゼロからイチに何か新しいものを創ることを、下は既存資産の活用を表しており、横軸の左は、その会社にとってのコア事業領域、右は新規事業領域を表しています。

 分かりやすいのは②と③ですね。②は、その会社にとっても新規領域で、かつ世の中にないものを、つまりゼロからイチを創っていく、正真正銘の「新規」です。一方、③は、その会社がすでに行っているコア領域での事業をさらに伸ばしていく。今「1」のものを「2」に、「2」のものを「3」にしていくということです。これを私たちは、“re-engineering”領域と呼んでいます。

 それでは①のコア事業領域におけるゼロからイチというのは何でしょう?

 今、多くの大企業は自社のコア領域において、全く異業種のプレーヤーにその収益基盤を脅かされることを最も警戒しています。ですが、ほんの数十年前までは、そんなことはおそらく考えもしなかったでしょう。例えば今から約20年前、AmazonやGoogleが産声を上げた時に、または故スティーブ・ジョブズ氏がAppleに復帰して“Think Different”を提唱していた時に、それがいずれ自分たちの業界を脅かす存在(または大いなる協業相手)となることを、予期していた自動車メーカーや電機メーカーがあったでしょうか?

 このように、異業種のコア事業に攻め込む、ITやデジタル企業による新規事業を“digital attacker”、そして、それによって生じるdisruption(破壊)から、その業種の企業が自らを守るために取り組む新規事業を“digital defender”とBCGDVでは呼んでいます。自動車業界や電機業界にとって、AmazonやGoogle、Appleは紛れもない“disrupter”であり、“digital attacker”である。一方、従来の自動車業界、電機業界そのものは、“digital defender”となります。