マーケティングを目的としながら、商品名やサービス内容をあえて伏せ、物語や演出を練った娯楽性の高い動画を制作する企業が増えている。インターネットで視聴するため、作品が魅力的であればSNSでたちまち拡散される。ブランドイメージ向上のみならず、集客で大きな成果を得ている企業もあるという。「ブランデッドムービー」と呼ばれるこうした動画マーケティングの成り立ちと現状、可能性について、2回に渡ってレポートする。(文/堀 香織)

 2016年7月に公開された静岡県のローカルメディア「静岡新聞」と「SBS(静岡放送)」による120秒のブランデッドムービー「超ドS『静岡兄弟』篇」が、「笑える」「最高に攻めてる」とSNSで話題をさらった。海辺で若い女性をナンパする75歳、65歳のふたりのお年寄りがまったく相手にされず、「今までの自分を超えろ!!」とばかりにジムで体を鍛え、若者に変身して再登場するというコメディだ。監督はSoftBankのCM「白戸家」シリーズなどを手掛ける山内ケンジ氏で、ふたりのお年寄りはそれぞれ、静岡新聞創刊75周年・SBS開局65周年を表現している。

 YouTubeでの再生回数は現在約15万回。公開直後は日本の各種メディアのみならず、イギリスBBCからも取材があり、「日本のマスコミがこれまでを超えようと頑張っている」と取り上げられた。その後、フランスの広告賞も受賞したという。

 静岡新聞SBS社長室経営戦略推進部副部長・奈良岡将英氏は、「面白いものをつくって世間の話題になれば、静岡県のみならず世界へと広くブランド力を認知・強化できると実感しました」と語る。「同時に、静岡県民の皆さんが地元静岡を誇りに思うことにもつながっていると感じます。外から『静岡って面白いね』と褒められるのは嬉しいですから」。

 イメージを一新することだけが目的ではない。「マスコミはネット上では“マスゴミ”と揶揄され、過去の栄光にしがみついているように言われがちです。我々も人に例えたら75歳・65歳なので、『過去の栄光を語りたくなるときくらいあるよ』というのをユーモラスに伝えようとした。ただ当社としては、おじいちゃんだからといってこのまま終わる気は毛頭ないわけです。そのためには、ちょっと、いや相当がんばればまだまだいけるぞと、社内を鼓舞する意味合いもありました」。

◆静岡新聞SBS「超ドS『静岡兄弟』篇」