黒田総裁の“花道論”は後退 <br />来年度に公約実現を懸け勝負か黒田東彦・日本銀行総裁の任期が来年4月8日に迫り、金融政策正常化に向けた“花道論”が市場を飛び交っていたが、今は後退している Photo:REUTERS/アフロ

 黒田東彦・日本銀行総裁の任期は、来年4月8日までだ。

 春先ごろまでは、「任期終了までに“花道”づくりとして、10年金利誘導目標の引き上げなど、金融政策の正常化に手を付けるのではないか」といった観測を市場関係者がよく口にしていた。しかし、現在はそういった見方は大幅に後退している。

 第一に、黒田総裁は“花道論”に関心を全く持っていないことが、今では明らかになっている。あくまでインフレ目標(2%)の達成にこだわっており、5月10日の講演でも、「大切なことは、『やり遂げる』ことです」と、ぶれない姿勢を強調した。

 第二に、インフレ率の上昇ペースが遅く、“花道論”を唱えられる状況にない。今後、宅配便のように人手不足を主因とする値上げを行う業種が一部に出てくるとは思われるが、全体としては企業の価格引き上げ姿勢はかなり慎重だ。

 第三に、黒田総裁が来春に退任するかどうかがそもそも不明で、再任の可能性もある。次期日銀総裁を最終的に選ぶのは安倍晋三首相だが、その選考基準は「今の政策を急に変えない人物」といったものになるだろう。

 インフレ目標達成は難しいが、政府はそこにさほどこだわっていない。日銀の金融政策決定会合の議事要旨を見るとそれが分かる。