ソフトバンク10兆円ファンドは同社自身をも根本から変革するPhoto by Takeshi Kojima

 ソフトバンクがサウジアラビアなどと共同で設定した“10兆円ファンド”の衝撃が広がっている。その資金規模やオイルマネーの取り込みなどに注目度が高まる一方で、ファンドの運営等に不安の声があるのも事実だ。だがかつてないスケールの大きなファンドの設立には、特定の事業ではなく、ビジネス全体で社会の変革に対応し、成長を実現しようとする孫正義氏の考えを読み取ることができる。企業の成長にはこれまでにはなかった新しい技術やコンセプトを取り込むことが欠かせない。ソフトバンク自体が大きく変わるだけでなく、孫氏が10兆円ファンドを通して実現しようとしていることには、日本の産業構造を大きく変えるほどのエネルギーが秘められているように思える。

投資によって事業基盤拡大
成長企業を見極める孫氏の眼力

 ソフトバンクの創業者である孫正義氏は、草創期から多様な企業に投資をして、そこから得られた収益を元手にして新規の分野に進出してきた。投資戦略をうまく使って事業基盤を拡大してきたことに、同社の強さ、特徴がある。投資によって新しい技術やコンセプトを取り込んだ最近の例では、人工知能分野などでの活躍が期待される英国の半導体設計企業、ARM(アーム)社を買収したことがあげられる。

 投資を行うことで経営基盤の強化と収益基盤の拡大を目指している企業の代表例には、米国のグーグルがあるが、日本にも投資で成長するビジネスモデルが登場してきているといえる。

 当たり前のことだが、投資には“リスク”が伴う。リスクとは予想と異なる展開のことだ。たとえば、ある企業の株価が上昇すると思って投資したとしよう。しかし、経営陣の不正などによって下落してしまった。これが予想と異なる展開=リスクである。