一足先に利上げに転じた米国では、大量の国債購入などで膨らんだ連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートの規模縮小に向けた議論が始まり、ユーロ圏でも量的緩和の規模縮小へ向けた地ならしが進むなど、米欧ではゼロ金利の下で続けてきた金融緩和の手仕舞いが動き始めた。しかし、リーマンショック以降10年近くに及んだ金融緩和を振り返ると、現在の「出口戦略」の議論にはいくつか見過ごされている点があるように思えてならない。

量的緩和策の効果
中央銀行の説明は一貫していない

 第一に量的緩和の効果に関する説明が一貫しないことである。つまり、米国の場合は、国債などの買入れは、2013年12月以降、連邦公開市場委員会(FOMC)の会合ごとにほぼ機械的に減額された。それだけでなく、2017年5月のFOMCの議事要旨で、保有する国債や住宅ローン債券(MBS)が満期になった際の再投資も、2017年末以降に機械的に減額する方針を示唆した。

 欧州中央銀行(ECB)の場合も、2018年に想定される量的緩和の縮小の際には、FRBと同様に機械的な縮小をするとの見方が強い。

 しかし、中央銀行が国債などを大量に買い入れることや、それを保有し続けることが景気や物価を刺激する効果を持つというのであれば、買入れを止めたり保有額を縮小したりすることは、逆に景気や物価を冷やす効果を持つはずである。だとすれば、そうした見直しもアプリオリに機械的なやり方でなく、景気や物価の状況や推移、将来の見通しによって柔軟に調節しながら行うのが筋ではないだろうか。