デート代を稼ぐため仕事が必要だった
恋人の提案で動き出した計画

 なぜなら井上さんは、三宅先生と知り合った直後の昨年3月にある計画を思い立ち、その実現に向け、すでに動き出していたからだ。

「僕には、右目を失明した直後から付き合い始めた恋人がいるんですが、カフェでデートしている最中、たまたま近くの席で英会話のプライベートレッスンが行われていた。それにヒントを得た彼女から、『あなたはVoiceOverを使ったブラインド操作が得意なんだから、目が見えなくて困っている人のためにプライベートレッスンを開いたらどう?』と提案され、『よし、やってみよう!』と決意したんですよ」

視覚障害者向けのイベントで講演を行う井上直也さん。右目は失明し、左目は光がわずかに感じられる程度だという

 日々の生活のため、そしてデート代を稼ぐためにも、仕事が必要だった。視覚障害者の就業といえばマッサージか一般事務が定番だが、そのいずれも、井上さんの性格には合いそうになかった。

「営業と飲食での接客経験を生かせて、なおかつ『目が見えないことを売りにできる』という意味で、彼女の提案してくれたプライベートレッスンはまさに、僕にしかできない仕事と言えました」

 VoiceOver機能を活用すれば、iPhoneやiPadが目の代わりになり、視覚障害者の生活が格段にラクになる。しかし、その設定方法などのノウハウを手取り足取り一から教えてくれる人は、これまでどこにも存在しなかった。