東京電力、福島第一原発の事故は日本人の生活様式を大きく変えた。とりわけ福島県の人々の場合は、その生活観どころか、人生設計、人生観そのものに大きな変更を与えている。

 ようやく建てた一戸建てマイホームを苦渋の思いで、永遠に遠に手放さざるを得なくなった家族、楽しみにしていた友人らとの新学期をバラバラに過ごすことになった子どもたち、豊かな食材を使って料理することを楽しみにしていた主婦――。

 こうした何の罪もない、実に多くの者たちが、一企業の人災と、政府の無策と、マスコミの怠慢によって、見えない放射能の脅威と一生戦わざるをえない状況に叩き落されたのである。

 それは、決して金では償えない。だが、当面、償うとしたら金しかないのも事実である。

第二次仮払金はわずか30万円で調整中
過去には原子力事故で泣き寝入りも

 今週、海江田万里経済産業大臣は、原発事故による第二次仮払金の額を一人当たり30万円で調整していることを発表した。

 すでに東電から住民に対しては一世帯あたり100万円の賠償金が支払われていた。ところが、世帯あたりの配分は不公平だとして不満が渦巻いていた。当然すぎる不満である。

 そこで、政府・東電は、ひとり当たり30万円の支給に踏み切ったのだが、そもそも、それでもあまりに低額にすぎる。

 放射能で家を汚染され、平和な生活を奪われ、自らの身体も低線量被曝と戦わなければならない住民からすれば、物理的にも精神的にも、到底、納得のいく金額ではないだろう。