李克強首相による
欧州歴訪

中国にとって欧州の嫌米感情が「願ったり叶ったり」な理由

 先週、李克強首相がドイツとベルギーを公式訪問した。前者では中独年度首脳会議に臨み、後者では第19回中国・欧州連合(EU)首脳会議に出席した。

 国際社会が依然として“トランプリスク”に対する不透明感を拭えない状況下において、それに追い打ちをかけるかのように、米国のトランプ政権が地球温暖化対策の国際ルール《パリ協定》から離脱することを表明し、波紋が蔓延している最中における欧州歴訪であった。

 不透明感、不安定感、不確定感が漂う中でこそ、中国共産党指導部の言動やそこで起こっている現象を注視すべきである。なぜならば、そのような状況下でこそ、党指導部が何を考えているか、何を望み、何に怯え、これから何をしていこうとしているのかという“意図”の部分が垣間見えてくるからである。

 “意図”の根底には、中国が経済的には後発的新興国、政治的には共産党一党支配体制、イデオロギー的には社会主義という“異端児”であるという自覚が潜んでいるように思われる。民主主義国から成る先進的“主流”に追いつき、追い越すためには、“危中有機”(危機の中にこそ機会あり)というロジックを戦略的に駆使していくしか道はないという潜在意識が横たわっているように思われる。ちなみに、「乱世出英雄」(乱世は英雄を輩出する)とは中国人民が歴史上だけでなく、日常レベルでもポジティブな意味で使用する格言である。

 若干、話が横にそれるが、前回コラムで題材とした“一帯一路”ハイレベルフォーラムが閉幕した直後、私は北京で共産党をつくり、その後新中国をつくった元老世代の子孫(通称“紅二代”)と交流する機会を持った。共産党がどのように国内社会を治め、国際社会に挑んでいくのかという話になり、“危中有機”や“乱世出英雄”といったワードも会話の中に登場してきた矢先、私が「貴党は往々にして社会における矛盾や摩擦を利用するどころか、扇動しますよね?」と問題提起すると、先方は次のように回答してきた。