抗生物質を安易に使うと危険!人体の9割は細菌でできている体を構成しているもののうち、ヒトの細胞はわずか10%、残りの90%は細菌である(写真はイメージです)

要約者レビュー

抗生物質を安易に使うと危険!人体の9割は細菌でできている『あなたの体は9割が細菌――微生物の生態系が崩れはじめた』
アランナ・コリン(著)矢野 真千子 (訳)
343ページ
河出書房新社
2000円(税別)

 本書『あなたの体は9割が細菌』の著者であるアランナ・コリンは進化生物学者だが、もともと微生物の研究をしていたわけではなく、専門はコウモリのエコロケーション(超音波の反射によって物体の位置を知る能力)だ。ある時、著者はフィールドワークに出かけたマレーシアでダニに噛まれた際に熱帯病に感染してしまい、その治療のため大量の抗生物質と数年間の月日を費やした。しかし、完治した後も皮膚の発疹や胃腸の障害など別の不具合に苦しめられるようになったという。その原因を探る中で、抗生物質がもともと体の中にいた細菌まで殺してしまったのではないかという仮説を持ち、調査を行ったことが本書を執筆したきっかけだ。

 我々の体には100兆個の微生物が住んでいるが、それがどれほど重要な存在かはあまり知られていない。体内の微生物生態系のバランス崩壊が自身の健康に与える影響や、健康を維持するために微生物に対して何ができるかを知っておくことは決して損ではない。私たち人間の進化の歴史は微生物と共に刻まれてきた。ヒトゲノムの解読によって私たちの「ヒト」の部分についてはかなり理解が進んできたが、それだけではなく、「微生物」の部分まで理解して初めて100%理解したと言えるのである。

 本書は一般の人にもやさしい平易な言葉で書かれており、生物学の知識がなくても興味を持って読み進めることができるため、世界19ヵ国でベストセラーとなったこともうなずける。難しくて分からないのではないかという先入観を取り払って、ぜひ手に取ってほしい。(山下 あすみ)

本書の要点

(1) 私たちの体を構成しているもののうち、ヒトの細胞は10%しかない。残りの90%は細菌であり、人体から微生物がいなくなったら私たちの生活は成り立たない。
(2) 肥満やアレルギー、心の病気などは「二一世紀病」と呼ばれるが、これらの原因を探っていくと、人体の中の微生物の存在がクローズアップされてくる。
(3) 有益な微生物を増やすことは健康への第一歩だ。食生活の改善や出産方式、授乳方法などを見直すことにより、私たちは微生物を「選択」することができる。