前年比プラスに転じた
消費者物価指数(CPI)

 消費者物価指数(CPI)が前年比プラスに転じている。たとえば、コアCPI(生鮮食品を除く総合消費者物価)は4月に前年比+0.6%と、28ヵ月ぶりにプラスとなった。

 生活コストを表すCPIがどの程度変動するかは、家計の経済厚生を直接左右する。だからこそ、金融政策の担い手である日本銀行は、物価の安定性を判断するに当たってCPIを重視している。

 また、持続可能性が厳しく問われている社会保障制度においては、公的年金にマクロスライドが導入されている。そのマクロスライドを適用するかを判断する際、CPIの変化率が重要な役割を担う。さらに、国が発行する物価連動債は元本がコアCPIに連動する。この点、市場参加者もCPIから目を離すことはできない。

 今後のCPIを展望する際、景気循環だけを見て事足れりとするわけには行かない。むしろ、政策・制度面に目を向けると、無視できないCPI撹乱要因が目に付く。そうした撹乱要因のうち、今回は(1)CPI基準改定、(2)社会保障・税一体改革、(3)エネルギー政策、の3点に注目する。

また「このとき」がやって来る
債券市場参加者が無視できない「5年に1度のイベント」

 また「このとき」がやって来る。債券市場には、こうした思いを強くしている参加者が多いのではないだろうか。5年おきになされるCPIの基準年改定だ。

 総務省は8月26日、現行の2005年基準CPIに替わって、新たに2010年基準CPIを公表する。物価連動国債は元本がコアCPIに連動するため、その価格は基準年改定の影響を直接的に受ける。そのため、CPI基準改定は債券市場参加者にとっても極めて重要なイベントだ。