米追加利上げが呼び起こすサブプライムの悪夢と不安米連邦準備制度理事会(FRB)が追加利上げを発表する直前、予想を下回る消費者物価指数(コアCPI)など経済指標の悪化で市場に動揺が走り、米10年債利回りが急低下する一幕もあった
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米国で中央銀行の役割を担う米連邦準備制度理事会(FRB)が、2015年末以降、4度目となる利上げに踏み切った。米経済の底堅さを映し出す一方で、足元では9年前の金融危機をほうふつさせるような指標が続出し、投資家の楽観ムードに冷や水を浴びせている。(週刊ダイヤモンド編集部 中村正毅)

「なんだか不気味なんですよね。9年前のような危機にはならないとは思うんですけど」(生命保険会社の運用担当者)

 国内の機関投資家の間で今、投資心理を悪化させる要因として、話題に上る米国の経済指標が二つある。

 一つは、家計の借金だ。ニューヨーク連邦準備銀行によると、2017年3月末の借金残高は12兆7300億ドル(約1400兆円)で、ピークだった08年9月末の残高を約9年ぶりに上回った。

 当時と大きく異なるのは借金の中身だ。08年のときは、「サブプライム」と呼ばれる返済能力の低い顧客層が借りた住宅ローンの焦げ付きが、未曽有の金融危機の震源となったが、足元の借金の内訳を見ると、全体の7割を占めている住宅ローンは、9年前に比べて残高が7%減っている。

 代わって、大きく残高が膨らんでいるのが、自動車ローン(同44%増)と学生ローン(同2.2倍)だ。