財源やコストに関する
計画は全くの白紙

 市場整備などにかかるコストについても、明確な説明は何もなされなかった。

 まず、市場の整備に関しては、豊洲市場への移転であっても、有毒物質が検出されている地下水の管理強化や、取引業者の使い勝手の改善のために、追加の工事が必要としている。また、築地に戻すとしても、取り壊して再開発するとなれば、当然、相当のコストがかかる。

「豊洲の整備でできた借金はどうやって返すのか。追加でかかる税金はいくらか」との記者の質問に対し、小池知事は「市場会計を痛めることのないよう、また税金を新たに投入することのないような方策について、今(事務方に)検討させたところでございます」「ベストなワイズスペンディング(賢い支出)でいきたいと思っております」とだけ言って、会見を打ち切ってしまった。

 つまり、財源に関する計画は白紙なのだ。

 これまで豊洲市場の建設にかかった5900億円の負債については、豊洲市場の利用料や、再整備した築地の地代や賃料といった収入によって削減できる、との“絵”を描いている。

 だが、配布資料には、収支の改善を示す折れ線グラフが途中から、なんとなく上向きの矢印に代わっていく図が示されているばかりだ(写真)。

 都幹部を中心とした「市場のあり方戦略本部」の会議では6月15日、築地市場跡地を売却するのではなく、「民間に長期間賃貸することで、年間160億円の地代収入を得ることができ、中央卸売市場会計の各年の収支は、償却前、償却後ともに黒字になり、豊洲の建設による累積赤字も2051年に解消できる」との試算を示している。

 確かに築地は一等地である。だが近年、東京都心の各所では、大規模なオフィスビルの開発が進められており、2020年代には供給過剰が懸念されているほどだ。しかも低層階に商業施設を導入するのが今のトレンド。たとえ築地ブランドがあったとしても、またそのブランドを生かして「食」をテーマにし商業施設を導入しても、30年もの長きにわたって競争力を発揮し、高い地代を得られ続ける保証はない。