東芝と日米韓連合に「生き残りへの貪欲さ」が見えない理由東芝が産業革新機構、日本政策投資銀行、ベインキャピタル、韓国SKハイニックスによる「日米韓連合」と半導体事業の売却交渉開始を決定した。この交渉に東芝の再生ストーリーは見えるだろうか Photo by Hirobumi Senbongi

東芝が手を組む日米韓連合に
意思決定のスピードと大胆さはあるか?

 東芝が産業革新機構、日本政策投資銀行、ベインキャピタルに韓国SKハイニックスを加えたいわゆる「日米韓連合」と半導体事業の売却交渉を始めることを決めた。

 筆者は以前、当連載の記事で、東芝の半導体売却について政府系ファンドの役割が重要という趣旨の意見を述べた。だがそれは、今回の日米韓連合のようなものではない。

 以前も指摘したが、半導体産業において何よりも重要なのは、意思決定のスピードと大胆さである。船頭が多くなれば、必然的に意思決定は遅くなるだろう。

 フラッシュメモリは、かつてのDRAM同様に日本企業の牙城であったが、現在ではサムスン電子が大きく飛躍して来ている。サムスンの組織はトップダウンで意思決定が早く、投資も思い切ってやる。

 産業革新機構には、中途半端な投資でせっかくの技術が生かし切れていないジャパンディスプレイという反省材料がある。東芝半導体の売却先として有力候補と見られていた米ブロードコムが2兆2000億円規模の買収額を提示するなか、日米韓連合も合わせて2兆数千億円規模の資金をかき集めたようだが、できれば政府系ファンドだけでこれだけの額を用意してほしかった。そうでなければ、無理をせずに民間の経済活動を見守っていた方が良かったのではないだろうか。