EUは「完全な退出」求める
貿易“特権”失う恐れ

 だが、こうしたハードかソフトかという議論はあくまで英国内での議論で、EU側が想定するのは「ハードブレグジット」に近い「EUからの完全退出」だ。

 EUは、「第二の英国」を生まないためにも、英国が有する単一市場へのアクセス権を完全に放棄させるスタンスを貫くとみられる。

 英国としては、国内の合意形成ができないまま、EUとの交渉も暗礁に乗り上げる「内憂外患」の末、EU側が強硬姿勢を崩さないまま、「合意なし離脱」が現実味をもって浮上しかねない懸念が強まる。

 この場合には、英国は、EUとの貿易では何の特権も持たない第三国(すなわちWTO加盟国と同じ)扱いになる。英国、EU欧州双方の企業は大幅なコスト上昇や資本制約に直面することになるため、何らかの交渉と合意を前提とする「ハードブレグジット」よりも一段と経済に与える影響は大きくなる。

 もともと、英国では次の総選挙は2020年の予定だった。

 メイ首相が前倒しで選挙した表向きの理由は、離脱交渉の最終期限が2019年3月のため、予定通り2020年に選挙総選挙をすると、離脱交渉を担う政権(保守党)と、2020年以降に実際の離脱遂行を担う政権が異なるリスクがあるためだ。スムーズなBrexit実現のためには、交渉と遂行の双方を担う政権を選ぶべきということだった。

 より生々しい理由としては、(1)保守党内でも離脱の路線をめぐって、ハード強硬派とソフト柔軟派で分裂しており、僅差での過半数では必ずしも安定政権とは呼べないこと、(2)総選挙を勝ち抜いたわけではないメイ首相に対し国民の信認を問うべきという声が常々聞かれたこと、そして何より、(3)支持率が低迷している労働党に攻勢をかける好機―などがあった。

 しかし離脱交渉に向け一段と磐石な政治基盤をという狙いは裏目に出た形だ。

交渉の不透明、英国経済に影
回復しかけた投資減少の恐れ

 一段と不透明になった離脱交渉の行方は、英国経済にも影を落としそうだ。

 総選挙で保守党が惨敗した後の12日、英経営者協会(Institute of Directors、IoD)は選挙結果を受け企業のコンフィデンス(将来見通し)が劇的に悪化したという調査を発表した。それは政治的な不確実性とその経済への影響が懸念された格好だ。