この一年の間、英国国内の設備投資が低迷した背景として、Brexitを巡る不透明感から企業コンフィデンスが慎重化したことが指摘されてきた。

 英国の中央銀行であるBank of England(BoE)が、先月の経済物価報告の中で確認したように、EU離脱がスムーズに進めば、今後、は設備投資はこの一年抑制されていた反動もあって、拡大し、英国経済を牽引すると期待されていた。

 実際、設備投資のデータを見ると、足もとわずかだが持ち直す動きも出ている。投資回復の兆しは、英国への対内直接投資にも表れており、16年末には大幅な資金流入が見られた。

 しかし、離脱交渉での「ハードブレグジット」どころか「合意なし離脱」の可能性が急浮上したことで、企業の将来見通しがさらに暗くなり、海外からの英国内への投資が先延ばしされたり、あるいは消滅すらしてしまったりする危険性が高まる。

 EU離脱の国民投票以来のポンド安がさらに進んで、輸入物価が上がり、消費マインドを低下させ、さらに企業の設備投資までが再び抑さえられるとなると、2017年後半は英国経済全体が低迷するリスクが高い。

 今後の離脱交渉は、毎月1週間ずつ行われ、英国とEU側の交渉の結果、作成された最終合意案は、欧州連合理事会(the Council of the EU)に提出されて、欧州議会(European Parliament)の投票で多数決を得る必要がある。

 合意が得られれば、合意案は再び欧州連合理事会に戻され、今度は欧州連合理事会による投票を経る必要がある。ここでは、少なくとも英国を除いたEU加盟の27カ国のうち、EU人口の65%以上を占める20カ国の合意を得る必要がある。

 同時に、当然ながら英国内でも合意案に対する議会の承認を得なければならない。こうしたプロセスには半年程度かかると見られるため、交渉自体は2018年秋頃に終わらせる必要があろう。

 もしこれらのどこかのプロセスで必要な合意を得られないままに2019年3月の交渉期限を迎えれば、英国は「合意なしで離脱」しなければならない。

 そして、EUとの離脱交渉と同時並行で、英国は財政再建にも取り組まなければいけない。選挙では高齢者向け社会保障費用の負担増などが国民の反発を買うこととなったが、保守党がマニュフェストで掲げた「2025年までに財政赤字をなくし、均衡財政を達成する」目標は、大幅な経常赤字を抱える英国が、対外的な信認を維持するためには、避けて通れないものだ。