「引きこもりのくせに何だ」「おまえには何の価値もないんだよ」

 そう怒鳴られるたびに傷つき、自信をなくしていった。

「弱い者へのいじめと変わらない。いったい何を支援しているのか?」

 疑問でいっぱいの施設から、Aさんは最近、脱走に成功した。自分で弁護士を調べて、助けてもらうことができた。親はこの施設に、700万円以上支払ったのではないかと推測する。

 以来Aさんは、今も実家で引きこもるような毎日。調子のいい日には外に出ることもできるが、時々恐怖心からフラッシュバックのように、施設での嫌な記憶が蘇ってくる。親と会話することは、もう二度とない。

「理不尽な支援」を巡るトラブル
結局待っているのは親子断絶

 1980年代に、過酷な訓練で傷害致死罪などに問われた戸塚ヨットスクール事件が社会問題化した。しかし最近、「理不尽な支援」を巡るトラブルは増える傾向にあり、声を出せない事例が数多く潜在化している。

 かつては“非行少年”などの“更生”として、厳しいトレーニングを課すのが特徴だったのに、いつの間にか“あなたのためだから”という、本人に問題があるかのような“自立支援”にすり替わってしまった。実際、詐欺のような団体が安易なビジネス目的で参入してきている。

 背景には、家族の不安と焦りに付け込む形で、本人の同意がないままに、判断力の弱った家族が高額な利用料を取られる契約が横行している。

 その結果、Aさんのように事態が悪化し、親への不信から親子断絶に陥る事例も少なくない。行政的な基準も特にないため、実は家族の同意があれば、引きこもり状態であるかどうかにかかわらず、誰でも施設に連れて行かれる可能性がある。これは、決して他人事ではない。

 こうした支援のあり方を一緒に考えようと、家族会では7月29日、「暴力的支援に陥らない支援を目指して」というテーマで、パネルディスカッションを名古屋市で開催する。詳細はHPを見てほしい。

(ジャーナリスト 池上正樹)