民主党が進める「郵政民営化見直し」の過程で、元官僚がトップに起用された日本郵政人事は、大きな波紋を呼んだ。「脱官僚依存」を旗印に発足したはずの民主党が、早くもトーンダウンし始めたことに、不満が噴出している。果たして、その背景には何があるのか? 自民党時代から一貫して「公務員制度改革」を主張し続けてきた渡辺喜美・みんなの党代表が、問題の核心を語る。渡辺代表は、財務省が影の司令塔となっている現政権の危機を指摘し、真の官邸政治を実現する必要性を主張する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也 撮影/宇佐見利明)

渡辺喜美
わたなべ・よしみ/1952年生まれ。栃木県出身。衆議院議員、みんなの党代表。早稲田大学・中央大学卒業後、83年自由民主党で副総理などを歴任した父・渡辺美智雄議員の秘書として政界に入る。96年自民党公認で衆議院議員初当選。2006年より安倍・福田両内閣で内閣府特命担当大臣(規制改革担当、金融担当)を務める。09年1月に自民党を離党し、8月に有志と共にみんなの党を結党、代表に就任。金融・財政分野に精通し、公務員制度改革は自身のライフワークでもある。

――内閣に向けた質問趣意書の提出、衆議院予算委員会における渡辺代表の質疑など、10月末~11月にかけて、みんなの党による与党追求が激しくなっている。

 背景にあるのは、「脱官僚依存」を掲げて政権をとったはずの民主党が、官僚依存政治へと逆戻りしつつあることへの懸念だ。

 民主党は総選挙前に、「政権をとったら各省庁で局長以上のポストに就いている人たちには、全員辞表を出してもらう」とまで言っていた。ところが、政権をとった途端に、そんな話は雲散霧消してしまった。

――渡辺代表は、安倍・福田両内閣において、内閣府特命担当大臣を務め、その間公務員制度改革を一貫して唱えてきた。そのポリシーは、現在のみんなの党にも受け継がれている。渡辺代表のお立場から見て、民主党が官僚依存体質に逆戻りしつつある理由を、どうお考えか。

 最大の理由は、財務省が公務員制度改革に抵抗するための「ステルス司令塔」になっていることだ。かつて自民党がそうだったように、民主党政権も実質的に財務省によって下支えされている。(*編集部注:ステルスとは、レーダーに感知されにくい戦闘機などの最先端軍事技術のこと)

 財務省の強みは、おカネやそれをベースにした人事権を一手に握っていること。予算・給与制度をテコに、公務員制度を内側から仕切っている。